2013年09月26日(木) 18:00 77
後藤騎手が落馬による怪我で休養を余儀なくされてから1年が過ぎようとしています。騎手の方々は乗り馬を確保するために完治をまたずに復帰することがよくあります。しかし、今回の後藤騎手の怪我は頸椎の損傷。ちょっとした異常が命に係わるほど繊細な部分です。それほど大切な場所にメスを入れる決断を下した理由は
「もう一度、騎手としてレースに騎乗するため」(後藤騎手)
だったそうです。しかし、それゆえに復帰時期はもちろん、復帰そのものに対しても医者は太鼓判を押してはくれません。すべての決断を下せるのは自分だけ。そんな状況の中で、慎重に慎重を重ねて復帰に向けて取り組んできました。
放馬してしまったスダチ
だからこそ“25日の調教で後藤騎手がシゲルスダチに騎乗する”というニュースは嬉しい反面、心配でした。よりによってこのタイミングで、スダチが放馬したからです。前日の朝、スダチは後ろで暴れた馬に影響されて立ち上がってしまい、乗っていた助手は落馬しました。幸い、厩舎のまわりを数周ほど放馬するだけで済み、その後も坂路の調教に参加する程度のアクシデントだったのですが…。放馬は放馬に違いないからです。
もちろん、スダチはむやみに立ち上がるような性格ではありません。そういうアクションを起こすときは必ず何かの原因があるのですが…それでも、時々“やってしまう”のは事実。それだけに心配でなりませんでした。
いくら百戦錬磨のジョッキーとはいえ、今は復帰目前の病み上がり。しかも、競馬は別のジョッキーが乗る。老婆心ながら「さすがに今回だけはやめておけば」と声をかけました。でも、後藤騎手は迷いませんでしたね。さすがにジョッキー。スケジュールを変更することなく調教をこなしていました。
翌25日。スダチは後藤騎手を背にし、大人しくゆったり構えていました。「とてもいい子でしたよ」という後藤騎手の言葉は決してリップサービスではなかったと思います。坂路へ向かう道中の落ち着きから一転、坂路での追い切りではひじょうに真面目に一生懸命走っていたのが印象的でした。
その姿を見て…。藤岡康太騎手とのコンビも素晴らしいのですが、それでも後藤騎手とのコンビを実戦で見たいと思ってしまいした。読者のみなさんもひじょうに気になっていますよね?
そのあたりを西園師に伺うと「いつかタイミングが合ったときに」のコンビ復活を示唆していました。スダチに適した番組が関東にあるとか、後藤騎手がスダチが走る週に関西へ来るとか…。そのときはいつになるか、定かではありません。しかし、いつの日か近い将来、このコンビが再びターフを駆けるシーンは見られることでしょう。いずれやってくるであろう、“その時”を楽しみに待ちましょう。
ハクサンムーンと久しぶりの対面
さて、今週はスプリンターズS。西園厩舎からはハクサンムーンとマイネルエテルネルが出走します。後藤騎手、かつてハクサンムーンにも騎乗していたんですよね。この日、スダチが調教前のウォーミングアップをしているあいだ、馬房にいたハクサンムーンと久しぶりの対面と果たしていました。後藤騎手が乗っていた2012年1月ごろは、まだ精神的に落ち着かないところがあったハクサンムーンですが、今では馬房でもゆったりと構えています。「後藤騎手が乗っていたころはスピードだけで競馬をしていた。馬体重もいまより30キロくらい軽かった。でも、今は心身ともに成長したよ」
と、西園師。手塩にかけた愛馬の心身の成長が何よりうれしいようでした。
一方、マイネルエテルネルについては「汗をかく季節になると調子を上げる馬」(西園師)と話していました。立秋が過ぎたとはいえ、まだまだ暑い日が続きます。そんな気候ならマイネルエテルネルもこれまでどおり、力を出せるのではないでしょうか。
28日ダート1400mでデビューするザマンダ
そして、王者・ロードカナロアも本当に具合がいいので楽しみ!先週の金曜日、時計を出した直後のカナロアを担当の岩本助手と一緒に見ていたのですが。ひじょうにゆったりと歩いていました。「速い時計を出したあとも、こうやって悠々としている。それがイイんですよ」とニッコリ笑顔の岩本助手。かなり自信があるようでした。最後に新馬の話を。28日ダート1400m戦は角居厩舎のザマンダに注目しています。
「ゲートは速く、性格は前向きで動じない。2歳のデビュー前の牝馬ですが、安心して乗っていられる」(岸本助手)と厩舎での評価はひじょうに高いです。今週の追い切りではレースで騎乗する池添騎手もまたがり好感触を得た模様。人気になったとしても狙いますよ。
花岡貴子
デジタルレシピ研究家。パソコン教師→競馬評論家に転身→IT業界にも復帰。競馬予想は卒業したが、現在も栗東トレセンでニュースやコラム中心の取材を続けている。“ねぇさん”と呼ばれる世話焼きが高じ、AFPを取得しお金の相談も受ける毎日。公式ブログ「ねぇブロ」(http://ameblo.jp/takako-hanaoka/)