2013年10月05日(土) 12:00
「世界最高峰」と言われる凱旋門賞の舞台はロンシャン競馬場の芝2400m。そして、10月6日に行われる第92回凱旋門賞で頂点を目指す2頭の日本馬――オルフェーヴルとキズナは、シャンティイの厩舎に滞在し、エーグル調教場で最終追い切りを行った。 ということで、今回は、2頭が毎日歩いたり走ったりしているシャンティイと、本番の舞台であるロンシャンの芝の状態などを、フォトリポートでお届けしたい。
10月1日、火曜日。シャンティイ競馬場・調教場のマチュー・ヴァンサン場長に、翌日オルフェとキズナが最終追い切りをする調教コースを案内してもらった。
シャンティイの調教場を案内してくれた
マチュー・ヴァンサン場長。
石畳の向こうの美しいシャンティイ城に迎えられ、馬の博物館を横に見ながら市街地に入り、パリ方面に向かう道を数分走らせると調教場のあるエリアに着く。
何も知らずにクルマを走らせていると、道の脇の森のなかに調教場があることには気づかないだろう。が、その道から建物ひとつぶん奥に入ったところには広大な調教場がひろがっている。
ヴァンサン場長によると、シャンティイ地区にいる馬は3000頭。ダートの調教コースの総延長は120キロ、芝の合計面積は120ヘクタール。
クルマが行き交う道路のすぐ奥に調教コースが。
オルフェはパイロンの間をコースとして最終追い切りを行った。
見てのとおり、埒も何もないので、コースというより草原という感じだ。こういうところで走ると、馬は埒に頼れないのでハミに頼るようになり、その結果、人間の指示を待つようになるのだろう。
キズナも調教で利用している直線ダートコース。
もう一本、砂に葉を混ぜこんだ直線ダートコースがある。
2本のダートコースの向こうに、2000mの芝の直線コースがあり、キズナはそこで最終追い切りを行った。ここは貯水タンクがあることから「レゼルボア」と呼ばれている。 シャンティイの調教場は、出走馬が獲得した賞金の一部と、走るごとの使用料などで維持、管理されている。通常の使用料は25ユーロ、キズナのように特別なケースでは100ユーロが徴収されている。
キズナが最終追い切りを行った
レゼルボアの直線芝コース。
芝コースの幅は、直線部分は60m(長さは600m)、その他は30m。芝は週に3回刈っており、見学に訪れた日の朝短くしたばかりだった。丈は9.5センチ。使用しているのはライグラス一種類。根が強くて長いのが特徴だという。引っ掛かりがよく、乾いていればしっかりグリップしそうだ。
ロンシャン競馬場ゴール前の芝。密集して根付きがよく、
見た目も踏んだ感触もシャンティイの芝によく似ている。
これまでは、凱旋門賞当日のレースが始まってから仮柵を取り外していたのだが、今年から、日曜日の第1レースが始まる前に外してしまうという。
「今年の春は雨が多かったので、芝がとてもやわらかくていい状態になっています。やや時計がかかる傾向にありますが、週末は晴れという予報が出ています」
凱旋門賞のゴールを先頭で
駆け抜けるのはオルフェか、キズナか。
彼も、前出のヴァンサン場長も、凱旋門賞当日、5000人ほどの日本人客が来場すると予想している。観客全体は6万から6万5000人ほどになると見込んでいるようだ。
そんななか、第92回凱旋門賞のゴールを先頭で駆け抜けるのはどの馬だろうか。
私たち日本のファンにとって歴史的瞬間となることを祈りながら、そのときを待ちたい。
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島田明宏
作家。1964年札幌生まれ。「Number」「優駿」「うまレター」ほかに寄稿。著書に『消えた天才騎手 最年少ダービージョッキー・前田長吉の奇跡』(2011年度JRA賞馬事文化賞受賞作)など。netkeiba初出の小説『絆〜走れ奇跡の子馬〜』が2017年にドラマ化された。最新刊は競馬ミステリー『ブリーダーズ・ロマン』。「優駿」に実録小説「一代の女傑 日本初の女性オーナーブリーダー・沖崎エイ物語」を連載中。プロフィールイラストはよしだみほ画伯。バナー写真は桂伸也カメラマン。 関連サイト:島田明宏Web事務所