2013オータムセール

2013年10月10日(木) 18:00

 7日(月)より9日(水)にかけて新ひだか町静内の北海道市場で開催されていた「オータムセール」が無事に終了した。当歳と1歳の二本立てで行われたが、総売り上げ、平均価格のどちらも伸び、まずまずの結果であった。

2013年オータムセール会場の風景

2013年オータムセール会場の風景

 初日はまず当歳市場からスタート。天候の良い暖かな1日で、コンディションとしては最高のセリ日和であった。正午より当歳58頭のセリが始められ、「希望価格500万円以上」に限定した“選ばれた上場馬”が出てきた。しかし、今年は一段と当歳を取り巻く環境が厳しく、まるでセリが盛り上がらない。声のかかる上場馬はわずかで、多くが主取りとなった。当歳の場合、お台付け価格が遵守されており、“値引き”はない。

 というよりも、この時期になると、日高の当歳馬にはそれほど需要がないのかも知れない。購買者の視線は続いて登場する1歳馬に注がれており、結果的に当歳は58頭中7頭の落札にとどまった。売却率は12.07%。昨年の半分以下の数字に終わり、改めて来年以降の当歳市場存続を再検討せざるを得ない状況である。

 なお、当歳の最高価格馬は36番「オーサムチャームの2013」(父エンパイアメーカー、牡鹿毛)の1627万5千円(税込)。生産者は(有)岩見牧場、落札は(株)ユニオンオーナーズクラブ。

初日当歳の最高価格はオーサムチャームの2013

初日当歳の最高価格はオーサムチャームの2013

初日1歳の最高価格はセクシーココナッツの2012

初日1歳の最高価格はセクシーココナッツの2012

 当歳市場は早々に終了し、続いて1歳市場が始まった。1歳になるとお台付け価格はガクンと落ちる。100万円台、200万円台の取引が主流で、相変わらず数だけはそこそこ売れていたものの、価格は伸び悩んだ。初日の1歳馬は167頭(牡60頭、牝107頭)が上場され、82頭(牡33頭、牝49頭)が落札された。1歳馬のみでは総額2億2968万7500円の売り上げで、平均価格は212万6250円。売却率は49.10%。昨年の初日よりもわずかに数字を落とした。初日の1歳市場の最高価格馬は173番「セクシーココナッツの2012」(父クロフネ、牡芦毛)で1522万5千円。姉にプレノタート、兄にザラストロのいる名血である。新ひだか町の(有)松田牧場生産で落札者は竹園正繼氏。

 2日目。天候は曇りがちながらも暖かく、まずまずのコンディションであった。初日と比較すると明らかに午前の展示から人が増えていた。この日は、社台グループから数多くの1歳馬が上場されることと、初日と比べると注目馬が多いことなどから、市場のムードが盛り上がった。

 初日同様にセリ開始は正午。見ていると、次々に売れて行く。とりわけ牡馬は品薄感があるせいか、かなりの割合で声がかかっている。ただし価格はピンキリで、サマーセールから見るとかなり落ちる。とはいえ、生産者にとってはオータムセールが年内最後の市場となるため、何としてもここで売りさばきたいところ。2日目は225頭(牡83頭、牝142頭)が上場され、157頭(牡70頭、牝87頭)が落札された。2日目の売却率は、実に69.78%まで伸びた。特に牡馬に関しては87頭中70頭、率にして84.33%もの数字を叩き出した。落札平均価格も前年と比較すると51万5308円増加し、328万6433円と大健闘であった。

2日目の最高価格はシャンハイレディ2012

2日目の最高価格はシャンハイレディ2012

 2日目の最高価格馬は360番「シャンハイレディ2012」(父バゴ、牝青鹿毛)の1365万円。お台500万円からスタートしたがどんどん競り上がった。生産は新冠の(有)武田牧場、飼養管理者は(株)白井牧場、落札者は吉岡實氏。

 2日目は低価格から予想外に競り上がる上場馬が目についた。複数の購買者がセリに参加すると価格は吊り上がる。主流は100万円台、200万円台の取引だが、時々驚くような勢いで価格の上昇する馬がいた。

 また社台グループは25頭もの大量上場だったが、全馬残らず「完売」された。2日目がオータムセールでのピークとなった。

 その反動か、最終日9日は一転してやや低調な市場に戻った。天候は終日雨で、セリが始まる前から本格的な降り方になり、気温も急降下した。冬服が欲しくなるくらいの寒さで、そのせいでもあるまいが、セリはいくぶん活気を欠いた。

最終日の最高価格はフミノオリヒメの2012

最終日の最高価格はフミノオリヒメの2012

 3日目はオータムセールで最大の278頭(牡135頭、牝143頭)が上場され、144頭(牡85頭、牝59頭)が落札された。3日目の最高価格馬は759番「フミノオリヒメの2012」(父キンシャサノキセキ、牡鹿毛)の1050万円(税込)。生産者は浦河町の多田善弘氏、落札者は松本好雄氏。なお3日目に1000万円の大台に乗った落札馬はこの1頭だけであった。

 1歳馬に限定すると、最終的に3日間のトータルでは670頭が上場され、383頭が落札された。総額で11億1825万円を売り上げ、前年よりも1億242万7500円の増加であった。また売却率も57.16%と4.3%伸びた。平均価格も52万9542円のプラスとなり、主催者を代表して日高軽種馬農協の木村貢組合長は、いずれも前年実績を上回る結果を出せたことに安堵の表情を浮かべながら「トレーニングセールから良い流れでここまで来たと思います。株価の上昇などの世情もあり、またJRAや各馬主会などのご協力もあって前年よりも数字を伸ばすことができました」と語った。

 平均価格の上昇は確かに近年ずっと低落傾向が続いていたことを考えたら朗報ではある。

 ただ、今後上昇に転ずるかどうかは未知数だ。それでも、従来の庭先取引から明らかに近年は市場で馬を買い求める風潮が強くなってきており、このこと自体は悪いことではない。

 あとはそれぞれの生産者が、いかに「良い馬」「高く売れそうな馬」を生産するかにかかっている。そして、生産コストやお台付け価格をハナから無視したような価格の提示は断固として拒否できる“自信作”を揃えて行くしかない。言葉にしてしまうといかにも簡単なようだが、実はこれこそが数10年間にわたり生産地が抱えてきた大きな問題でもある。

 次回、もう一度簡単に今年1年間の日高軽種馬農協主催による市場を総括しておきたいと思う。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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