秋は芦毛の季節か/白秋S

2013年10月11日(金) 18:00

 準オープン1600万条件のメインなので、とくに特徴的なテーマはなく、「最近の東京芝1400mはスローペースが非常に多い」くらい。いまスタッフの間で盛り上がっていた芦毛がネタ。
 人気のスマートレイアー、伏兵リボントリコロールがいるから、日曜日の秋華賞にも関係する。

 芦毛はその昔、夏に走るといわれたが、それは生産頭数の2-3パーセントしか芦毛馬が存在しなかった当時のこと。数十年前に記されたF.テシオの名著サラブレッドの研究でも、「芦毛は病気である」と信じられていたくらいだから、実は、芦毛はまだ不明な点だってある。

「芦毛は、その両親の少なくともどちらかが‥」という芦毛の法則は、案外、分かりにくい表現である。芦毛の毛色は遺伝によるが、特殊な結合型などの場合を除き、ふつうの芦毛馬は「だいたい産駒の半分にしか芦毛の毛色を伝えない」とした方がわかりやすい。だから、活躍馬が登場して種牡馬になったりしないと、いつも減少する運命にある。タマモクロスやオグリキャップで盛り上がったころ、生産馬の6-8パーセントに増えたが、現在はまた4パーセント前後なのだろう。

 日本の芦毛はグレイソヴリン系が伝えたものが多かったため、スピードや切れの生きる夏の平坦巧者が多かった。また、他の系統でもエルバジェ系は腰が甘かったり、ネイティヴダンサー系はー本調子だったりした時代なので、これが夏に走るといわれた主な理由だった。白い馬は太陽の光を反射し……、などとまことしやかにいわれたこともあるが、高価な現役サラブレッドを夏の日差しが照りつける場所に放置することはない。この理由はあまり説得力がなかった。

 春の4冠「桜花賞、皐月賞、オークス、日本ダービー」は、ここまで4レース合わせ切りのいいことに合計「300レース」行われている。芦毛の勝ち馬は計「7頭」である。

 一方、秋の2冠「菊花賞、秋華賞(3歳牝馬限定当時のエ女王杯を含む)」は、ここまで合計「110レース」だけなのに、芦毛の勝ち馬が「8頭」もいる。勝ち馬出現率は春「0.23%」に対し、秋は「0.73%」。3倍以上も3歳GIの勝ち馬に占める割合がちがうのである。

 なぜだろう。たまたまのことか。芦毛の馬はヒシミラクルや、タマモクロスや、ビワハヤヒデや、秋華賞のファビラスラフインがそうだったように、秋に成長する馬が多いのではないか。とりあえずそういうことになったが、根拠はきわめて希薄である。

「白秋S」は、ただ1頭の芦毛馬プランスデトワール(父ディープインパクト)に期待したい。

 母スキーパラダイスから、その母スキーゴーグル、さらにその母……とさかのぼって、プランスデトワールから数えると6代母がオビィデント(父マームード)。ずっとスピード系。

 しかし、芦毛馬はその産駒のだいたい半分にしか芦毛を伝えないことを考えると、この芦毛の継承はすばらしい。牝馬を通してだから、ただ、芦毛が続いただけでなく、活躍馬を送り続けた証拠にもなる。芦毛の英ダービー馬マームードは、母マーマハル、その母マムタズマハル、その父が伝説のザテトラーク(1911)。合わせてちょうど10代前、100年前のザテトラークに到達。

 マームードは、現代の天才種牡馬サンデーサイレンスに(4×5)の形で入っている。秋華賞の人気馬スマートレイアーに芦毛を伝えるのも、母方に流れるスペクタキュラービッドを通して、実はマームードの芦毛である。

 プランスデトワールは、ここまでに3回、東京芝1400mに1分20秒台があり、この春はちょっとスランプだったが、立て直した「秋」はもうひと回りパワーアップしてオープンに出世できる可能性がある。ある程度先に行く足もある。ウエストエンド、同じく先行するシルクオフィサーが相手大本線。

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柏木集保

1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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