2013年11月01日(金) 18:00 46
2歳戦は終盤を迎えている。2歳サイアーランキングは、10月31日現在、
1位 ヨハネスブルグ 約2億6133万円
2位 ディープインパクト 約2億5571万円
3位 キングカメハメハ 約2億2702万円
この3頭が3500万くらいの大接戦を展開している。「アルテミスS」をミュゼリトルガールが勝つと、たちまちディープインパクトが定位置に浮上するが、ヨハネスブルグにも1600mくらいは平気な産駒がいるから、まだまだ分からない。珍しく差のない3位につけているキングカメハメハの逆転もありえる。
2歳戦にはあまり熱が入らないファンがいる一方、逆に2歳戦こそ興味の中心のファンも数多く存在する。現在、JRAの2歳重賞は計「12R」だが、来年からは「いちょうS」と「ラジオNIKKEI杯京都2歳S」の2重賞(ともに格付けGIII予定)が新設される。これまでのラジオNIKKEI杯2歳S2000mは、やがてはGI格付け予定の「ホープフルS」2000mになる。1600mの「いちょうS」が生まれ、「ホープフルS」のグレードが上がり、「ラジオNIKKEI杯京都2歳S」が誕生すると、ヨハネスブルグとか、サウスヴィグラス型の2歳種牡馬ランキングは下がるかもしれない。
距離に対する考え方や、あるいは、実際にこれまで走ったことのない距離に出走する場合の推理は難しい。距離の適性は、その馬にとってもっとも高い能力を出し切れる距離は…であるから、たとえばロードカナロアが最優秀スプリンターと評価されても、出走のさせ方ひとつで、実は最強マイラーだったかも…とするくらい難しい。
種牡馬バゴの産駒で、母の父にステイゴールドをもつ牝馬「クリスマス」は、今回挑戦する東京1600mでどんなレースを展開してくれるのだろう。
はっきりしているのは、種牡馬バゴ(その父ナシュワン。祖母ハイクレア)はマイルでGIを含む4連勝もし、1800mのGIを1分46秒6で独走し、2000mのGIパリ大賞まで連勝記録をのばし、伏兵人気の凱旋門賞まで勝った馬であること。
日本にきての代表産駒は、菊花賞3000mのビッグウィークと、マイルが比較的合っていたオウケンサクラと、どうも1200-1400mを超えると、力量不足なのかスタミナがないのか止まる馬がいて、よくいえば万能型。難しいという意味では、総じて……などという括り方を許さない、やや平凡な種牡馬である。マイラー型は少ない。
母の父ステイゴールドは、ゴールドシップ、オルフェーヴル。2頭も菊花賞馬を送り、3200mの天皇賞馬も出したから、底力とスタミナを備えたトップホースを送る名種牡馬の地位をたしかなものにした。ただ、繁殖牝馬の質やレベルによることも大きいが、それは良く出来た産駒のことであって、とくに別の適性を示すことも珍しくないブルードメアサイアーとしての実績は、キャリアのわりに著しく少ないのである(良くないという意味ではない)。
だらだら並べても仕方がないが、バゴの産駒にトップマイラーはまだいない。また、ステイゴールド産駒にも、優秀なマイラーはきわめて少ない。その血を集めた小柄な牝馬クリスマスが、どういう成長過程をたどるのか、今回が1600mだけにかえってあやふや過ぎるのである。
新馬を自身「34秒8-34秒5-(11秒9)」=1分09秒3で独走は、後半がしっかりしすぎている点に、逆に優れた短距離タイプを連想させた。しかし、函館2歳Sの1分09秒6は意図的に2番手に控えて、自身「33秒8-35秒8-(12秒4)」。苦しくなってバテることなく2番手以下を完封したレース内容は、一見、後半甘くなったようでいて少々の距離延長などほとんど応えない総合スピードを示したといえる。
前述の理由でマイルをベストとする馬とは推測しにくく、距離がOKだったら1800-2000m級が合うタイプではないかと推測することにする。ハイペースの1600mは危険だが、流れが落ち着くならスタミナ能力は2000m級も大丈夫という意味である。
初輸送の遠征、初距離、初めての坂は承知で、総合力でクリスマス中心としたい。確実に追い込んできそうなツクバアスナロ、前回すでに1分34秒6を記録しているマーブルカテドラル、今週の動きが光ったニシノミチシルベ。この3頭が相手本線。パシフィックギャル、セレナビアンカ、マユキに流したい。
柏木集保
1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。