スクリーンヒーロー産駒モーリス/京王杯2歳S

2013年11月08日(金) 18:00 28

 京都芝1400mの新馬を1分20秒6の2歳コースレコードで圧勝しているスクリーンヒーローの初年度産駒、「モーリス」のレースぶりに注目したい。

 時計が速いのは秋の京都の開幕週だから驚くことはないが、注目はその中身。2戦目に順当に快勝したインヴォーク(母チアフルスマイル)がハナを切った流れは、新馬戦とあってスロー。これを好位でなだめて追走したモーリスの1分20秒6のバランスは、推定「前半35秒5-(11秒3)-後半33秒8-11秒3」である。エンジンがかかってからの後半の加速に、ずば抜けたものがあった。後半の方がはるかに速い。

 新種牡馬スクリーンヒーロー(9歳)は、競走時代の08年秋、AR共和国杯2500mを勝った勢いに乗り、伏兵評価だったジャパンCも抜け出して勝った。全5勝が1800m以上。短距離には出走していない。ところが、その産駒は早い時期の短距離戦に対応し、11月6日現在、9頭の産駒が14勝し、新種牡馬ランキング「4位」につけている。

 スクリーンヒーローの産駒が、スピードを前面に出してきたのには、その父グラスワンダーが関係する。同馬は有馬記念2連勝、宝塚記念制覇で知られるが、1997年、きょうの京王杯2歳Sを6馬身差で独走している。また、スクリーンヒーローの祖母ダイナアクトレスは、現京成杯AHの快レコード1分32秒2(87年)や、完成期のジャパンC3着で名牝となったが、函館2歳Sを5馬身差で圧勝が出発だった。

 モーリスの祖母は、男馬相手のAJC杯、AR共和国杯をパワーと切れで差し切った長距離系メジロモントレー(父モガミ)。デビュー戦の、後半の方がずっと速い内容から、モーリスの距離延長にほとんど心配はないと思える。やがて、ダイナアクトレスや、メジロモントレーや、グラスワンダーや、スクリーンヒーローのように成長したい。

 逆転候補の1頭に、ここが4戦目になるライアンセンス(父ジャングルポケット)をぜひ入れたい。ライアンセンスの「ライアン」は、おそらくメジロライアンからの命名にちがいない。2戦目に追い込んで勝ったライアンセンスの祖母は、オークスを勝ち、今週の「エリザベス女王杯」を2連勝したメジロドーベル(その父メジロライアン)である。

 前回こそ出負けして凡走だが、最後だけ追って上がり35秒0。力を出し切っての敗戦ではない。こちらもこれからの変わり身と成長力は大きいはずである。

 ライアンセンスから数えて4代母になるメジロナガサキ(父ネヴァービート)と、モーリスの3代母メジロクインシー(父フィデリオン)は、ともにメジロボサツ(父モンタヴァル)を母とする姉妹になる。メジロボサツはちょうど今から半世紀前の1963年生まれ。いま、盛んに遠い時代のコマーシャルが流れる寺山修司が好んだ牝馬だった。1番人気だったオークスは2着。同様に1番人気だった桜花賞も、のちにテンポイントの母となるワカクモからクビ、ハナ差の3着に負けた。
メジロ牧場が消えた後になって、メジロボサツの牝系からこういう注目の2歳馬が出現した。もうメジロの名はないから、ひょっとすると気がつかれないかもしれない。でも、メジロ牧場の育てた牝系の血は絶えない。活力を失うこともない。

 もちろんこの2頭を、アポロスターズや、クインズハリジャン、ラブリープラネットと絡めて組み合わせを考えるが、モーリスと、ライアンセンスには、クラシックのころ。

 そして古馬のビッグレースのころ、距離の可能性を探そうと、その血統図が何度も検索されることを待ちたい。

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柏木集保

1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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