2013年11月15日(金) 18:00 63
11月も中旬になり、6月(公営は4月末)からスタートした2歳戦は終盤を迎えた。
先週の「京王杯2歳S」では、JRA重賞では今年初の男馬の勝ち馬カラダレジェンド(父フレンチデピュティ)が誕生した。
2歳種牡馬ランキングでは、ずっと首位に立ってがんばっていたヨハネスブルグを、予想されたようにディープインパクトが捕らえてトップに踊り出ている。11月9日現在の差はまだ約1500万円だけだが、東京スポーツ杯2歳Sにはディープインパクトの注目馬が3頭もいる。残る1ヶ月半、ディープインパクト産駒の活躍は例年同様、どんどん加速されるのだろう。
東京1800mの重賞となると、もう完成の早さでリードする早熟性を、来期以降につながるスケールが圧倒し始めるとされる。東京1800mは、古馬の場合でもペースうんぬんではなく、距離適性を含めた総合能力がモノをいうレースが大半になる。
昨年の勝ち馬コディーノはちょっと足踏みしているが、11年はディープブリランテ、ジャスタウェイ、クラレントがいた。11年サダムパテック、09年ローズキングダム、08年ナカヤマフェスタ、07年スマイルジャック、タケミカヅチ、06年ドリームジャーニー、05年メイショウサムソン……など、のちのビッグレースの主役になるべき馬が今年も含まれているのが当然のレースである。
人気の注目馬は、ディープインパクト産駒で、キズナなどと同様、母の父にストームキャットをもつサトノアラジン。約束されたように出現したこの2歳馬は、ただストームキャット牝馬にディープというだけでなく、祖母ウォーターダンス(父ニジンスキー)は、1973年のベルモントS、プリークネスSを制した米2冠馬リトルカレント(父シーバード)の半妹である。調教で示すストライドはディープインパクトのしなやかさやバネというより、馬力型を連想させたりもする。エリザベス女王杯2着で一気に評価の上がった全姉ラキシスとはかなりタイプが異なると思えるが、豊かなスケールに恵まれていることだけは疑いもない。ここで結果が出るようなら早くも候補の筆頭に浮上だろう。
だが、ここはもう一回クラリティシチー(父キングカメハメハ)に期待したい。勝ち上がったのはサトノアラジンより2週前の新潟。好位のインから上がり33秒2で鋭く抜け出し、いきなり1800m1分49秒3だった。
まだ成長の途上とあってあまりビシビシ追うことはせず、前回のいちょうSも少しソフトな仕上げだった。レース運びもあまり果敢ではなく、出負けして後方のインに控えたあと、直線は前に数頭が固まっていたため、負坦のかかる進路選択や、他馬との接触の危険を避けるような慎重なレースに終始した。気合をつけて追ったのはゴール寸前の100mくらいと思える。たしかに迫力満点とか、力強さにあふれるというタイプではなく、そのため、今回も対戦する勝ち馬イスラボニータ(父フジキセキ)には0秒2差の完敗におわったものの、中身は少しも見劣らなかった。
馬群が少し開いてから軽く追っただけで寸前には(まともなら悪くても)2番手までは上がれそうでもあった。やや細めに映る体つきは、母の父スペシャルウィークの影響だろう。心配ない。間を空けずに通算3戦目になる今回は、当日輸送も、東京1800mも2戦目。まして将来の展望を確かなものにしたいグレードレース。
田中勝春騎手だから、若駒に負担のかかるような強引なレースはしないのは承知。それでも好勝負と思える。
サトノアラジン、イスラボニータ、デルカイザー本線。公営で2戦2勝のプレイアンドリアルは、間違いなく好素材だが、軽快なスピード系とも思えないから、1回は東京での芝レースぶり拝見。ここを勝てるようなら、何回もJRAの重賞で勝ち負けすること必至になるから、あわてて買うことはない。今回は押えにとどめたい。
柏木集保
1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。