せんだんは双葉よりかんばし

2013年12月05日(木) 12:00


 諺(ことわざ)は知っていても、その言葉をきちんと知っているかと言うと怪しい。「せんだんは双葉よりかんばし」のせんだんという植物についての知識、果たして行き渡っているだろうか。実はこのせんだん、よくわからないそうだ。

 一種の香木らしいのだが、それ以上追求しなくても、諺の意味をつかんでいればよく、双葉のうちから香気の強いせんだんのように、後に大成した人は、子供のころからどこか違うということ。

 そう言えば、競馬ではよく耳にする。仔馬のころから他とは違っていた、と。それを求めてホースマンは牧場に足を運ぶのだ。いくら見立て違いがあろうともへこたれない。ところが、もっと夢を大きく持つと、仔馬誕生以前の、どの父親とどの母親を交配させるというところまでいく。

 かつてケンタッキーの繁殖牝馬のセリでアイルランド1000ギニー優勝馬ケイティーズを購入し、これにブリーダーズCターフなど芝のGIレースを6勝するなど欧米で活躍したシアトリカルを配合して生まれた牝馬がいた。

 アメリカ生まれで、外国産馬がまだクラシックに出られない時代のこと。その牝馬の牧場にいたころの評価は4段階のBランク、それほどでもなかった。2歳(旧表記)の秋に千葉の牧場に移り、3歳のデビュー戦をめざしたがなかなか目が出ない。ようやく、秋の新馬戦に間に合ったが、脚元に不安があり大事を取ってダートのデビュー戦。楽に勝つつもりが辛勝でなんとかできたが、2戦目もダートの特別で2着。ここまではB評価もうなずけたが、待望の芝で戦うようになった3戦目からは、まるで別馬に。

 牡馬相手の京成杯3歳Sで素晴しい走りでクビ差敗れたものの誰の目にも新たな可能性を印象づけた。その馬ヒシアマゾン。関東から只一頭西下してのぞんだ阪神3歳牝馬S(現阪神ジュベナイルF)で5馬身差の凄まじい勝利で花開かせたのだった。その後は言うまでもないが、せんだんの香りはどうだったのか。

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長岡一也

ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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