2013年12月21日(土) 12:00
◆2013年もいよいよフィナーレ、来年はJRA創立60周年
2013年の中央競馬も、いよいよフィナーレを迎える。 今年は日本ダービーが第80回、東京競馬場が開設80周年、そして寺山修司が没後30年を迎えた節目の年だった。
来年、2014年は、JRAが創立60周年ということなので、12年の近代競馬150周年から3年連続で「競馬史」をひもとくことが多くなりそうだ。
あなたにとって、今年はどんな一年だっただろうか。 個人的には、「週刊ギャロップ」の桜花賞号から始まった競馬歴史小説「虹の断片(かけら)」の連載が軸となった一年だった。執筆と調べ物の時間を確保するため競馬場に行く時間を減らし(関西GIは宝塚記念しか見に行かなかった)、毎年恒例になっていた春のドバイ取材もとりやめた。「何かを捨てなくては、別の何かを得られない」という人とそうでない人がいると思うが、私は捨てなくてはダメなタイプらしい。イラストの都合もあるので、連載がスタートした時点で10話ぶん、つまり原稿用紙100枚ほど先行して書いていた。
前年のブリーダーズカップからつづけていた、WOWOWの武豊騎手特番のインタビュアーとしての仕事が終わったころ、「Number Web」での連載が始まった。3月だった。
グリーンチャンネルの「教えて!Gウーマン〜日本ダービーを学ぶ〜」の一部に出てあれこれしゃべったりしたのもそのころだ。
ほかに、ニッポン放送のSILVAさんの番組や、AIR-G'(FM北海道)のDJ龍太さんの番組などにも出てお金をもらっているうちに、クイズ番組などに出ている作家があまり物を書かなくなる気持ちがよくわかった。書くことより苦しいことはない。私にとって、と言うべきか。これまで書くこと以上に苦しい思いをしたことのない私は、苦しまずに金をもらったことがなかったので、好きなことをしゃべるだけで金をもらうのは、なんだか申し訳ない気がした。
もうひとつ大きかったのは、武騎手のキズナがダービーを勝ったことだ。前にも書いたように、ブリーダーズカップあたりから、彼は、200勝していたころのリズムと体のフィット感を完全にとり戻していた。
それまで私は、彼がGIを勝ってもお祝いをしたことはなかったのだが、今回だけは、ダービー翌週のインタビューのとき、酒を持って行くことにした。
しかし私は下戸なので、どんな酒がいいのかまったくわからない。財布だけ持って最寄り駅の駅ビルに行ったのはいいが、途方に暮れてしまった。なので、身近で、高い酒を一番たっぷり飲んでいそうなプロデューサーの曽布川善一氏らに電話で相談した結果、玉川高島屋に入っている明治屋にソムリエがいるというので、そこでいろいろ聞きながら買うことにした。
1枠だったので白ワインがいいような気がした。以前彼はイタリアのワインが好きだと言っていたが、今年は凱旋門賞に行くのでフランスのワインのほうがいいかもしれない……などと、わからないなりに考えていたら、お祝いならシャンパンがいいとソムリエに言われた。そして、2005年がヴィンテージイヤーなのでこれはどうかと薦められたフランスのシャンパンにした。05年は、キズナの父ディープインパクトが三冠馬になった年だ。
ダービーのあとしばらくは、私のところにまでかなりの「キズナ効果」が来て、コメントだの原稿だのと忙しくなった。
だいたい3カ月に2回ぐらいのペースで札幌に介護帰省し、2週間ほど滞在しては帰京する、ということを繰り返した。
夏場は、グリーンチャンネルの寺山修司没後30年特番のロケでいろいろな人に話を聞いたり、「スシ屋の政」のモデルと言われる大将がいた店に行ったりした。
相馬野馬追では、震災の年に知り合った小高郷の騎馬武者・蒔田保夫さんと一緒に動き、友人の一刀孝光さんらと毎夜、蒔田さん宅で反省会をし、これも楽しかった。
秋はやはり凱旋門賞に尽きる。キズナがニエル賞、オルフェーヴルがフォワ賞と、主要な3つのトライアルのうち2つを日本馬が制した。今年も悲願は達成できなかったが、重い扉をこじあけたことは確かだ。
師走に入ってから、イソノルーブル、マチカネタンホイザ、ダイユウサクと、個性派たちの訃報が相次いだ。
クリスマスの前に中央競馬が終わってしまうのはちょっと早すぎるような気がしていたら、来年の有馬記念は28日になっている。将来GIを目指すという2歳重賞のホープフルステークスも同じ日だ。で、翌29日には大井で東京大賞典が行われる。
「虹の断片」は、初代ダービージョッキーの函館孫作、日本初の女性騎手となった斉藤すみ、最年少ダービージョッキーの前田長吉を視点人物として進めており、そろそろまとめに入るところだ。
今は、次の長編の準備をしながら、年度内に出す予定の単行本にとりかかっている。本に関しては、詳細を発表できる段階になったら、また「もういいよ」というくらい、ここで紹介させてもらいたい。
それでは、みなさん、よいお年を。
次回の更新は、年明けの1/11(土)になります。
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島田明宏
作家。1964年札幌生まれ。Number、優駿、うまレターほかに寄稿。著書に『誰も書かなかった武豊 決断』『消えた天才騎手 最年少ダービージョッキー・前田長吉の奇跡』(2011年度JRA賞馬事文化賞受賞作)など多数。netkeiba初出の小説『絆〜走れ奇跡の子馬〜』が2017年にドラマ化された。最新刊は競馬ミステリーシリーズ第6弾『ブリーダーズ・ロマン』。プロフィールイラストはよしだみほ画伯。バナーのポートレート撮影は桂伸也カメラマン。 関連サイト:島田明宏Web事務所