週刊サラブレッド・レーシング・ポスト

2003年09月22日(月) 20:44

 9月8日から、間に1日の休みを挟んで12日間に渡って行われてきた「キーンランド・セプテンバーセール」が、20日(土曜日)に終了。平均価格、中間価格とも歴代最高を記録する好況に終わった。

 指標で言うと、総売り上げが前年比13%アップの2億7412ドル、平均価格が前年比28.5%アップの92,320ドル、中間価格が前年比13.3%アップの34,000ドル。バイバックレート(主取り率)が、前年の23.6%から22.3%に減少と、全ての指標が上を向く結果となった。キーランドセプテンバーは、昨年が総売り上げ17%ダウンで平均価格18%ダウンというクラッシュだったので、前年対比が良化したことはそれほど評価出来ることではないが、まずは関係者が一様に胸をなでおろす結果となったことは間違いなかろう。

 ただし心配なのは、セール後半で需要に息切れが見られたことだ。例えば、中間のお休みが入るまでの4日間が終了した段階での指標を見ると、総売り上げが前年比42%アップで、平均価格が前年比37.9%アップ。中間価格も前年比25%アップと、いずれも最終的な数字よりはかなり高い水準でマーケットが推移していたのである。すなわち、高い方の価格帯は需要が高かったのに対し、中間以下の価格帯における需要はさほどでは無かったわけで、市場の下支えという点で、今後に若干の不安を残したとも言えるだろう。最終的な数字を見ても、中間価格の伸びが平均価格の伸びを大きく下回った点に、こうした市場の特徴が良く表れている。

 種牡馬別に見ると、平均価格が最も高かったのは相変わらずストームキャット。12頭が平均95万ドルで購買された。以下、ダンジグ(87万ドル)、アンブライドルド(72万ドル)と、毎度お馴染みの名が並んでいるが、トップ3のうちアンブライドルドは既に他界。ストームキャットが来春の種付け時には21歳で、ダンジグに至っては27歳だから、市場関係者にしてみれば、この高齢種牡馬依存傾向を何とかしたいところだろう。

 一方、日本人によると見られる購買は、前年の45頭から今年は29頭と、大きく数を減らした。

 日本人購買馬の平均価格は、前年の228,688ドルに対して今年は221,206ドルと、ほぼ同等。すなわち、1頭ずつの市場における評価は前年並みで、個体のクオリティは前年と等しいレベルのアメリカ産馬がこの市場から日本にやって来ることになる。

 ところが、投資額という側面から見ると、前年の日本人全体の購買総額が1029万ドルだったのに対し、今年は641万ドルと、前年のわずか62%に落ち込んだのである。市場が強かったことを考慮したとしても、予想以上の急激な縮小と言わざるを得ないだろう。

 外国産馬に対する日本人の需要は、ここまで低下してしまったのだろうか。或いは、外国産馬に対する嗜好が変わったのだろうか。

 この後、ニューマーケットのホウトンセール(10月1日・2日)、オクトーバーセールPart1(10月7日〜10日)と、世界のイヤリングサーキットはヨーロッパシリーズに突入するが、例年以上に日本人バイヤーの動向に注目したいと思う。

バックナンバーを見る

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

新着コラム

コラムを探す