初夢に寄せて

2013年12月26日(木) 12:00


◆「運命の女神がノックしたら扉を開けよ」

 身にふりかかる現実の悪事や災難を、ことばの威力を信じ、夢にとりなして払い除けようと唱える「夢になれ夢になれ」。夢の力は計り知れない。「馬の夢を見るは好事あり」と言い、「太陽を夢に見るは吉」とも言う。どんな夢を見るかは分からないが「いい夢を見たら黙っていろ、悪い夢を見たら早く人に話してしまえ」だから、万事都合よく考えればいいのだろう。だが、夢は持ち続けたい。

 気持の改まる新年を迎えると、この夢は大きく広がっていくが、そうは問屋がおろさない。そこで、運を頼るようになる。降って湧いたような幸運に出会わないものかと。

「大願成就」の祈りは神社で手を叩くときのもので、日々の生活の中では、旨い話はないものかと心を動かすぐらいのものだ。でも都合よく考えてばかりいるのは、旨い話が少ないからで、やはりこれも頼りない。結局、なるようにしかならないということなのだが、それでも一度だけこんな幸運が訪れたことがあった。

「運命の女神がノックしたら扉を開けよ」と西洋では言っているそうだが、いわゆる「お告げ」みたいなものがあったのだ。正月最初の重賞「金杯」の検討をしていたとき、「金杯の三つ重ね」と頭に浮かんだのだった。当時は、8枠連勝複式が主流で、三つ重ねから3-3との暗示を受けた。新年だから、そこは素直にそれを三千円の一本勝負に出たのだ。どこまでいっても三つ重ね。これは昭和54年のこと。1着5番のシービークロス、2着6番メジロファントムが8枠16頭立てだったから枠番連勝は3-3で大的中、見事お告げが現実となったのだった。

 どうして運命の女神が扉を叩いてくれたのかはわかる筈はない。だが、その時は確かにそうなったのだから、好運としか言いようがない。なるようにしかならない日々でも、こんなことも有り得るのだと、それ以来ずっと思い続けてきたが、案外、レースを的中させるとはこんなことなのかもしれない。


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長岡一也

ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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