門別の坂路と南関重賞

2013年12月27日(金) 18:00 26


◆門別の坂路がもたらす変化

 先週の本コラムで、全日本2歳優駿を制したハッピースプリントのドバイ(UAEダービー)挑戦について触れた。しかしその後26日にホッカイドウ競馬からリリースがあり、UAEダービー挑戦は断念し、大井・森下淳平厩舎へ移籍して東京ダービーを目標とすることが発表された。

 全日本2歳優駿のレース直後、田中淳司調教師は、ドバイ遠征に対しての意気込みを熱く語っていた。しかしそのコメントからは、馬主さんとはすでに話し合っているものの、あらためて説得しなければならないというようなニュアンスも感じられた。その結論が、今回の発表となったのだろう。

 ただし大井へは一時的な移籍で、リリースの田中調教師のコメントには、「東京ダービー終了後は、再びホッカイドウ競馬に戻ってきて、中央競馬などにも挑戦する予定です」とあるから、そのあたりがオーナーサイドと厩舎サイドの妥協点だったと思われる。

 近年では、ホッカイドウ競馬でデビューして活躍した2歳馬は、シーズン終了とともに南関東や中央への移籍が既定路線のようになっているが、もしかしたらそうした流れも変わってくるかもしれない。

 最大の要因は、昨年(2012年)5月に門別競馬場にオープンした屋内調教用坂路だ。

 これまでホッカイドウ競馬では、冬期間は開催がないばかりでなく、十分な調教もできなかった。それが屋根付き坂路ができたことによって、冬期間でも調教ができるようになった。それゆえ田中調教師も自分の手元で鍛えてのドバイ遠征に意欲を見せたのだろう。

 今後は、有力な2歳馬がシーズンを終えても門別から出ることなく、3歳シーズンを迎えるというケースも増えてくるかもしれない。

◆3歳上半期の南関重賞が地方全国交流になったら

 問題は、その間に遠征して使えるレースがあるかどうかということだ。

 近年、地方競馬でもかなり交流が進んだとはいえ、賞金の高い南関東では、ダートグレード以外で地方全国交流となっている重賞はまだまだ少ない。たとえば3歳牝馬では、浦和・桜花賞がグランダム・ジャパンに組み込まれているため全国交流になってはいるが、同じグランダム・ジャパン3歳シーズンでも東京プリンセス賞は、いまだ南関東限定のままだ。3歳牡馬では、他地区所属馬が南関東の重賞に挑戦しようと思えば、JpnIのジャパンダートダービーを別とすれば、お盆時期に行われている黒潮盃まで待たなければならない。

 仮に3歳上半期の南関東の重賞が地方全国交流になれば、屋内坂路で調教を積み、北海道所属のままで南関東に挑戦するという馬も増えるだろう。そうなれば2歳から3歳にかけての馬の流れが劇的に変わる可能性もある。

 強い2歳馬を育てれば育てるほど、その先に待っているのは移籍というのが常だったホッカイドウ競馬の厩舎関係者のことを思えば、そろそろ少しずつでも南関東の重賞は他地区の馬に開放されてもいいのではないだろうか。


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斎藤修

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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