「切に願うことは必ず遂ぐるなり」

2014年01月23日(木) 12:00


◆プレイアンドリアルのクラシック挑戦物語

 思い通りにならないのが世の常、だからこそ智慧と勇気が生まれるので、なにも思わない日常からはそれは出にくい。特にそれが好きなものであれば、どこかでいつも「切に願うことは必ず遂ぐるなり」と念じ続けていて、この言葉を友としてやってきたようなところがあるものだ。そう、切に願って。そして、心は物に触れて起こるものだし、心に触れても起こるものだから、その好きなものの何に触れたかの意味が大きい。

 プレイアンドリアルが京成杯を勝ち、公営の星と呼ばれ出した。ホッカイドウ競馬にあって門別のダートと盛岡の芝で勝って2戦2勝、中央に挑戦した東スポ杯2歳Sでイスラボニータと競り合いクビ差の2着、第2のコスモバルクの声が聞かれた。願うのは中央のクラシック、それも地方競馬にあってこそという思い。そこで川崎に転きゅうして、その大願に立ち向うことに。朝日杯FSの敗戦の原因を徹底的に追求し、欠点矯正のための特訓を施し、とにかく勝つための智慧を出し合い迎えたのが京成杯だった。これで春のGI戦への出走は可能となり、地方所属馬の皐月賞、ダービー挑戦という物語を楽しむことができるのだ。そう、どう物語を感じ取れるかは、何に心が触れたかによるのだが、どこまで楽しませてくれるか。

 京成杯が春のクラシック戦線の序章なら、AJC杯は、古馬の中長距離をのぞむ一戦。かつて、メジロライアンを父に持つメジロブライトがここを勝ち、阪神大賞典から春の天皇賞を制覇していた。父ライアンが皐月賞3着、ダービー2着、菊花賞3着に対し、息子ブライトは、4着、3着、3着、勝ち切れない姿から「切なる願い」を念じ続けたものだった。無器用でスタートが悪く、いつも後方からの競馬ばかり。追い込み一辺倒でありながら勝ち続けたその春の戦いぶりと、父ライアンとの関連。この物語は、「切に願うことは必ず遂ぐるなり」を現実にしてくれたことで胸を打った。さて、この春は。

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長岡一也

ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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