平成25年度のBTC利用状況

2014年01月29日(水) 18:00


◆昨年は札幌競馬場改修工事に伴って休養馬の入厩が少なかったとも言われている

 昨年度1月〜12月までのBTC(軽種馬育成調教センター)の利用状況がこのほどまとめられた。仕事柄ここへは定期的に通っているが、実感として馬の数が減っている印象があり、さぞ深刻な状況になってきているのでは、とも思っていた。

 だが、データを見る限り、必ずしもそうとは言い切れない部分もある。まず、1年間の利用延べ頭数は、昨年度は確かに前年よりも落ち込み、14万7617頭であった。率にして前年比88.3%という。

 春から夏の期間が大きく減ったという。昨年の場合、札幌競馬場改修工事に伴って、開催が函館のみとなり変則的だったことから、休養馬の入厩が少なかったとも言われている。

 札幌開催がなかったことで馬の流れが大きく変わってしまったのは間違いなく、今年もこの傾向が続くわけではなかろう。

 全体の延べ頭数こそ1割強の落ち込みとなったものの、利用実頭数は、一昨年よりも微増という。2843頭が昨年この施設を利用し、前年比で100.2%の実績である。

 利用実頭数が前年並みでありながら、年間を通じた延べ頭数が落ち込んでいる要因は、ひとつには周辺の育成牧場に在厩する期間が従来よりも短くなってきていることがあげられるだろう。すでに、いくつかの育成牧場が本州にも分場を構え、デビュー前の2歳馬が春になると早々に移動してしまうケースも増えている。2歳戦で早めから使い出すことを視野に入れて、より温暖な土地で仕上げる傾向が出てきているのは確かだ。

 また、BTC周辺の育成牧場には入厩していながら、必ずしも毎日、調教場を利用しないケースもある。自前の馬場である程度まで乗り込み、曜日を決めて強めの調教を行なう日だけ利用している場合もあるだろう。もちろん、周辺にある育成牧場のすべてが自前の馬場を有しているとは限らないが、それぞれ調教場の利用形態を少しずつ変えてきているのかも知れない。

 そうしたことが、全体的にやや頭数の減っている印象に繋がっているものの、幸いにも昨秋以降はまた数字を盛り返しつつあるらしく、12月には前年を上回る数字まで回復したとも聞いている。

BTCの朝

調教へ向かうBTCの朝

 その一方で、昨年度の利用馬の競走成績はまずまずの好成績であった。GI競走を4つ制した(メイショウマンボ、ゴールドシップ)のを始め、中央ではGII5勝、GIII9勝をマークした。勝ち鞍の総数では755勝。前年比で−36勝だが、近年は700台で推移している。

 一方、地方競馬に目を転じると、交流重賞のうちGIが4勝、GIIが1勝、GIIIが5勝となっており、勝ち鞍総数では2598勝と過去最高を記録した。

 利用馬の定義は「一度でもこの施設で調教を行なったことのある馬」とされているために、1歳から2歳にかけてごく一時的に通ってきた馬も含まれるし、夏場のわずかな期間、休養にやってきた馬もカウントされる。したがって、中には確かに利用歴があるものの、ある程度の期間継続的に通っていたとは言えないケースも出てくるわけだが、現時点では他にジャッジする方法がなく、この方法で集計する以外になさそうだ。

 開場以来20年が経過し、周辺の民間育成牧場もほぼピークと言えるまでに増えたが、今後は徐々にそれぞれの「質」が問われてくる時代になるだろう。ひとつ気になるのは、BTC周辺の育成牧場の顧客の多くが個人馬主であるということ。昨今、多頭数の1歳馬を買い求める人が少なくなってきているのに加えて、主たる生産地である日高の生産頭数も頭打ちである。日高の中でも、大手牧場はすでに自前の育成施設を有するので、BTC界隈の育成牧場に入ってくるのは多くが中小牧場生産馬で個人馬主がセリその他で買い求めた1歳馬たちだ。この先、ますます限られた顧客を奪い合う方向に進むのは間違いなく、どの育成牧場も在厩馬確保に頭を悩ませることになるだろう。いや、すでにその傾向ははっきりと表れている。

 また、全体的にはまだまだ騎乗者の絶対数が足りない育成牧場もあり、依然として東南アジア系の助っ人外国人に依存している現状もある。この20年で厩舎はほぼ間に合うだけの数になり、スタッフの住宅問題もほとんど解決した。残るのは有能な騎乗者をいかに確保できるかが生き残るためのキーポイントである。実はこれが最も悩ましい部分なのだが・・・。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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