2003年10月07日(火) 15:55 0
10月1日・2日の両日、英国のニューマーケットで欧州最高のイヤリングセール「タタソールズ・ホウトンセール」が行われた。
今季ここまでの世界のイヤリングマーケットは、各国各地で前年の数字を上回る活況となっているが、実情を言えば昨年のマーケットが何処も大クラッシュで、前年比での大幅アップも実は前年の落ち込みをどこまで取り戻せたか、というのが実態であった。そんな中で昨年、主要な市場ではここだけ突出するように数字を伸ばしたのがこのホウトンセールで、今年の上場頭数が前年より25頭ほど少なかった事を重ね合わせれば、前年対比という面では「縮小しなければ御の字」というのが、開催前の市場関係者の見方だった。
ところが蓋を開けてみれば、総売り上げが前年比3.9%アップの2934万ギニー、平均価格が前年比17.2%アップの266,272ギニー、中間価格が前年比25%アップの20万ギニー、前年24.3%だったバイバックレート(主取り率)が今年は20.8%と、全ての指標が上に向き、このうち平均価格と中間価格は歴代最高という、誰もが驚く大盛況となった。
成功の原因は、上場馬のレベルが高かったことに尽きるだろう。カタログ上の血統が良かったの加えて、実馬の出来が良く、なおかつ、スプリンターからステイヤーまでヴァリエーションに富んだ品揃えを実現できたことが、予想外の好結果につながったようだ。
最高価格は、2日目に登場した上場番号115番、父ジャイアンツコウズウェイ Giant's Causeway・母カラースナップ Colorsnapの牝馬。125万ギニーで、ジョン・マグナー氏とマイケル・テイバー氏のコンビが購入し、アイルランドのエイダン・オブライエン厩舎に行くことになった。
近年でも最高の顔触れが揃ったと言われる今年の新種牡馬の中でも、実用性から見るとナンバーワンの期待がかかるジャイアンツコウズウェイ。この市場にも大量19頭がエントリーし、その中の1頭が最高価格となったわけで、一見すると期待通りなのだが、私見を述べさせていただくなら、ジャイアンツコウズウェイの産駒は個体によって出来にバラツキがあるのが気になった。これは8月のドーヴィルセールの際にも感じた事なのだが、ジャイアンツコウズウェイの子供たちは必ずしも、力量感溢れる馬体で「アイアンホース」と呼ばれた父を彷彿させるタイプばかりではないのである。むしろ小柄な産駒が多く、そんな中には小柄ながらも豆タンクのような体型の馬もいる一方で、小さくて華奢な子も少なくないのだ。ストームキャット Storm Catの直子であるからして、小さい子が多く出る事は不思議ではなく、また小さいからと言って見限るわけにもいかないのだが、「アイアンホース2世」の期待とは程遠い子が多いのである。
したがって、数少ない「父らしい」ジャイアンツコウズウェイ産駒には需要が重なった結果が、この最高価格につながったと思う。
新種牡馬で言うと、意外に粒が揃っているのがモンジュー Montjeu。サドラーズウェルズ Sadler's Wellsの重さを感じさせる子が少なく、敏捷なバネと器用さを備えていそうな子が多く見受けられたのだ。思いの他、日本の競馬に適性を示す子が多く出るかもしれない。
合田直弘
1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。