2014年02月11日(火) 18:00
◆コスモバルクが開いてくれた道
6日に目黒雅叙園で行われた、NARグランプリ2013の表彰式。昨年の地方競馬を彩った豪華な面々が顔を揃えた中でも、一際注目を集めていたのが、最優秀ターフ馬に輝いたプレイアンドリアル陣営。地方から挑戦することの意義、そしてコスモバルクとの比較など、たっぷりと語っていただきました。
・岡田繁幸オーナー
「地方から使うことにこだわっていて、こういう賞をいただけて嬉しく思います。その後、京成杯でも結果を出してくれたので、正直ホッとしています。
プレイアンドリアルを初めて見たのはトレーニングセールだったんですが、タイムトライアルで平凡な時計だったものですから、チェックする対象に入ってなかったんです。馬房へ行って引き出して見ていなかったもので。
競りにかかる前に、パレードリンクを回ってる時に、『あれ、いい馬だなぁ。こんなにいい馬そう簡単にいるわけない』と思って、どうしても欲しくなったんです。またノーザンファームが来たら2000万3000万で獲られちゃうなって思ってたんですけど(笑)、どこまで行くのか確かめたくて。『とりあえず競っておけ』って言って、僕自身は競りの裏側でタイムトライアルの時の走りを見たくて、テレビを見ていたんです。
それでうちの職員が、『社長、一声で落ちたみたいですよ』って言うんですよ。僕自身は、競りでどこまで行くか、どこまで行ったら諦めるかって思ってたので。一声で落ちたのは、本当に運が良かったですね。
芝への適性は、やっぱりこの馬は芝馬なんですよね。これから、川崎に在籍したままクラシック戦線も歩むし、出来れば海外遠征もやって欲しいなって思ってるんですけど、ダートは相手関係を見て川崎で使いたいと思ってます。
東スポ杯に関しては、負けてビックリしましたね。けど日本レコードで走ってるんですよ。やっぱり、盛岡で芝使ってますけど、全然時計が違うので。やっぱりパンパンの日本レコードが出るような馬場には、馬は一回では対応出来ないんだなって痛感しましたね。高速馬場に一回で対応するのは、難しいんだと思います。
現時点での状態は、右前脚にずっと不安を抱えているんです。かなり強い調教に耐えては来たんですけど、ちょっと不安を抱えてて…。繋靭帯炎なんですね。ぶっつけで皐月賞へ行こうとは思ってますけど、ダービーが最終目標なので、青葉賞からダービーか、今どっちにしようか相談しながらやってます。
今は北海道に帰して、北海道の寒空に馬服を着せて、マイナス10°以下のところで夜間放牧しているんです。寒い中をずっと立ってる。立つことによって、自然な負荷をかけて耐えさせるんですけど、非常に荒療法やってます。これまでも決して順調な過程ではなかったんですけど、ちょっとそこが心配なところがあって、荒療法やってます。
地方からなぜ?と皆さん思うと思うんですけど、やっっぱり職場環境があまりにも地方と中央は差があり過ぎるのが、納得いかないですよ。これだけ娯楽が多様化して、発達した世の中で、競馬産業全体で支えて行かないと。地方とか中央とか言ってる時代はもう終わりです。この業界が一丸となって、競馬産業を盛り立てることを考えなくちゃならない時に来てるんだと思います。そのためには、地方からでも、中央のダービーとか有馬記念とかジャパンカップを目指せるような、地方のホースマンが関わっていけるようなシステムに変えて、中央の厩舎サイドに挑戦出来るようにしなければと思います。
岡田オーナーは「業界が一丸となって、競馬産業を盛り立てることを考えなくちゃならない」と語った
その中で、優秀な者が、努力する者が報われる業界、どっからでもチャレンジが出来る業界にしていきたいという願いを込めて、バルク二世というつもりで、プレイアンドリアルにまた夢を賭けたんです。
コスモバルクが開いてくれた道を、またこうやってプレイアンドリアルで歩めるというのはね…、こういう馬たちとの出会いは、わたしは本当に運がいいと思いますよ。能力的なことでいえば、バルクには申し訳ないけどプレイアンドリアルはちょっとモノが違います。ここまでの馬はなかなかいないですよ。でも、芯の強さで言えばバルクの方が上ですね。その辺りが成長してくれたらと思います。これからは、自分との戦いなんですよ。強い調教に耐えられるのか。脚元のこともありますけど、自分自身との戦いです。
日本ダービーに関しては…、大きな夢ですね。人生を賭けるのに相応しい夢だと思ってます。プレイアンドリアル(祈り+現実)なんていう大げさな名前を付けましたけれど、その夢に向かって頑張って行きます」
・田部和則調教師(北海道)
「デビューの時は、直接ビッグレッドファームからのレースだったんですけど、素晴らしい結果を出してくれましたね。
門別のデビューがものすごく華やかに勝たせてもらったんですけど、盛岡でもやはり素晴らしい結果を残してくれましたし、最後の上がりの時計がまた素晴らしい上がりだったので、ジョッキーさん(関本淳騎手)も、『今まで乗った中で一番の馬だ』って褒めてくれました。
東スポ杯の時には体調も万全だったので、勝てる自信はあって臨んだんですけど、負けてしまって残念でした。
オーナーから素晴らしい馬をずっと預けていただいて、もう本当にコスモバルクも調教しましたけれど、やはりプレイアンドリアルの方が、瞬発力の能力という点ではバルクよりもちょっと上かなと思います。是が非ともクラシック目指して頑張って欲しいですね」
・河津裕昭調教師(川崎)
「うちに移籍して来るというお話をいただいて、もちろんプレッシャーはありますがとても楽しみでした。
朝日杯の後は、馬の精神面を考え、調整を反省しながら戦術を立てたいなと思いました。岡田オーナーがアルゼンチン方式の調教を取り入れまして、こちらに持って来た時にも、止めて、走らせて、また止めて、走らせてという調教をしました。それで馬も落ち着きが出ましたし、折り合いも付くようになりました。本当に賢い馬です」
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常石勝義
常石勝義 1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)の『常石勝義のお馬塾』(毎週金曜日17:30〜)に出演中。