2014年02月13日(木) 12:00
◆「用兵攻略の本は、民をひとつにするに在り」
競馬には、戦い方のツボがはっきり見えて楽しい時がある。
「天の時、地の利を得たうえで、敵の動きを見極めてから行動を起こし、しかも先手を取ること。これが用兵の基本」と語ったと、中国、戦国時代の武将の言葉が伝えられている。
思想家、荀子と兵法論を戦わせたときのことだが、道悪の京都、出世レースのひとつ3歳牝馬のエルフィンSを勝ったシャイニーガールがこれにあたる。追込一辺倒だったが、秋山騎手は3コーナー手前で一気に先頭に立ち、そのまま後続を突き放し、2勝目を挙げていた。秋山騎手は行かしたわけではなく、ペースが遅く馬が行く気になっていたと言っていたが、人馬の気持がひとつになっていたから出来た芸当だ。天の時、地の利を得た上での戦い方であったのだ。
この兵法論を戦わせたとき荀子の見方は違っていた。「用兵攻略の本は、民をひとつにするに在り」と、用兵の基本は人々の心をひとつにまとめることにあるというのだ。例えば、6頭立ての馬車を走らせるとき、どんなに駆者が優秀でも馬が足並みをそろえなければうまくはいかないように、人々の支持を得られなければ、どんな名将でも必ず勝てるとは言えない。人々の心を掌握することが先決で、一丸となる戦いは、そういうところから生まれると言うのだ。
このことは、きさらぎ賞を勝って3戦全勝で牡馬クラシックの先頭に立ったトーセンスターダムの陣営に言えるのではないか。めざすのはダービー、武豊騎手はこう述べて憚らず、あくまでもこの馬のレースをと戦っているが、見守る池江調教師も同じ方向を見つめているのだ。勝てなくてもこの馬らしさをと思っていたのが勝ち切れたのが大きい、と、語っていたが、馬体を成長させていくのにゆとりが出てきた。恐らく陣営の心はひとつになっていけるだろう。
さて、今度は共同通信杯だ。この快進撃を阻む存在が登場するのか、それを見るのが楽しい。
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長岡一也
ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。