ソチオリンピックを観戦して思うこと

2014年02月15日(土) 12:00


◆晴れ舞台で最高の栄誉を

 ソチオリンピック真っ最中。連日連夜のテレビ観戦で寝不足に悩まされている方も多いことでしょう。でも、思わず見入ってしまう気持ちはよくわかります。

 冬のオリンピックの特徴は、フィニッシュの瞬間に順位がわかる競技が少ないこと。夏の大会の花形と言えば陸上のトラック種目と競泳ですよね。これらの競技は、決勝線に到達した順番で順位が決まります(目で見ただけではそれがわからず、タイムが表示されて初めて順位を知るとか、リレーの引き継ぎミスで上位チームが失格となり、後から順位が繰り上がるとか、いろいろな例外はありますが)。ですから、最終順位争いは決勝戦の一斉スタートレースですべて決着。誰がどの色のメダルを取ったかは、その場ですぐにわかるようになっています。

 他の競技、サッカーやバレーボール、柔道やレスリング、テニスや卓球、バドミントンなども、決勝戦で勝った方が1位。タイムアップで試合終了とか、ポイントを取って勝負が決まるとか、終わり方は様々ですが、これらもそこで白黒ハッキリするという意味では一緒でしょう。

 ところが冬の競技(メインはスキーとスケートとソリ競技)のうち、一斉スタートでゴール到達順に順位が決まるのは、ノルディックスキーのクロスカントリーやスケートのショートトラックなど一部だけ。あとは、誰かの走り(滑り)や演技が終わっても、他の選手の結果を見ないと順位が決まらない、というものがやたらと多いような気がします。

 しかも、スキーのジャンプやスピードスケートは、競技が進むにつれてだんだんと強い(=メダル候補)選手が出て来ますが、アルペン種目やソリ競技は、後になればなるほどコースコンディションが(ふつうは)悪くなるので、強い選手が先に出てくることのほうが多いのです。そうなると、「今後、このタイムを上回れる選手は出て来そうもない」となっても、最後の選手がフィニッシュするまで、延々と競技終了を待たなくてはいけません。この間がまだるっこしくて、途中で別の競技を放送しているチャンネルに回してしまうってこと、ありませんか?

 冬の競技を見ていると、自分の力の入り方が夏の競技を見ているときとちょっと違うかな、と感じることもあります。不謹慎な話ですが、応援の気持ちが強くなって、ライバル選手がプレーしているときに「失敗してくれないかな」という気持ちがよぎってしまうのは、冬の競技のほうが多いような…。

 競馬は一斉スタートの一発勝負。大きなレースになるほど出るだけでもタイヘンなのはオリンピックと同じです。ただ、その中にダービーのような一生に一度しか出られないビッグレースがある、というのはオリンピック以上。そういう晴れ舞台で最高の栄誉を馬に与えるため、人間が力を合わせる。これが競馬の素晴らしさ、かもしれません。

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矢野吉彦

テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。

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