デスペラードの本当の能力を信じていた横山典弘騎手/京都記念

2014年02月18日(火) 18:00


◆期せずして「うまい」「さすがノリ(典)!」の声が上がった記者席

 6番人気の伏兵、デスペラード(父ネオユニヴァース)=横山典弘騎手の必殺の先行策が決まった。技ありである。一緒に見ていた周囲の記者から、おそらく馬券は外れたと思えるのに、期せずして「うまい」「さすがノリ(典)!」の声が上がった。

 もちろん、勝ったのはタフな6歳デスペラードではあるが、ジェンティルドンナ、トーセンラー相手の押し切り勝ちは、ベテラン横山典弘騎手(45)の絶妙の騎乗によるところ大である。

「(デスペラードでは)、行けたら行こうという気持ちをずっと持っていた。きょうは思い通りのレースができた」という。しかし、デスペラードには軽快なスピードがない。まして気難しいから、気分を損ねるような疎通を欠く指示を出しては凡走の危険が生じる。ここまでの7勝はすべて、前半は後方でムキにならないように追走しての追い込みか、差し切りである。

 みんなが苦しくなったステイヤーズSを抜け出したスタミナはあるが、この相手の2200mで先手主張はさすがに予想外だった。雪かきのあとの馬場状態、相手の仕上がり状態、それぞれの出方、脚質…。みんな読んだうえでの、「今回は先に行ける」の判断がデスペラードの能力全開につながったのである。奇策の先手ではないから、レース全体の流れは、

 「前半63秒7-(12秒9)-後半59秒4」=2分16秒0

 離して飛ばし、他馬を幻惑したわけではない。前半はごく平凡なスローペースである。最初は2番手につけたアンコイルドにしても、少し行きたがる感じで早めに2番手に押し上げたジェンティルドンナにとっても、途中から行きたがって仕方がないから一気にスパートして4コーナーで先頭に立ったトゥザグローリーにも、先頭を奪ったデスペラードは、ほかに行く馬がいないから単にハナに立ったトップ引きのように映った。いつでもかわせるはずの…。

 抑え切れない感じでジェンティルドンナが横に並びかけても、意を決したトゥザグローリーが抜き去るように先頭に立っても、横山典(デスペラード)は逃げ込みを図るスパート態勢に入ったとは見せず、(実際には一気にピッチが上げたのに)、抵抗しているように見せない。抜かれかけているのに、それは仕方がないことで、まるでもうあきらめたかのように追う姿勢を隠した。

 かわされた逃げ馬なのに、4コーナーを回ってまだ追うのもムチを入れるのも待ったのは、みんなが苦しくなって止まったステイヤーズSで、4コーナーを回ってから猛然と伸び、あっというまに3馬身半も突き抜けた「最後にがんばってもう一度脚を使う」デスペラードの本当の能力を信じていたからである。今回は、いつか「行こうと思った」チャンスがきていたから先行した。もちろん馬場状態からして、上がり33秒台のレースになどならない。鋭さの勝負ではない。なら、ムリなく先行するとき、追い比べでも互角のレースができる。その通りだった。

 逃げた馬の差し返しではなく・・・

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柏木集保

1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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