2014年02月27日(木) 12:00
◆テスタマッタが教えてくれたこと
人間形成のうえで、師、先輩、友からの影響は非常に大きい。自分より優れた人たちであることが前提になるが、そういう人たちとのつき合いこそ、自分を成長させる力となると、孔子は諭している。さらに、これとは別にこんな話も伝えられている。「香りの高い花を生けた部屋にいるうちに、いつの間にかその芳香が身についていくもの。これと同じで、優れた人物のそばにいると、やがて自分からそういう人物に近づいているものだ」と。つき合いに関しては、くれぐれも慎重であるべきと教えているのだ。
あるきゅう舎にチャンピオンがいて、それと四六時中行動を共にしてきた後輩馬が、やがてぐんぐん強くなっていくという話はよく聞いてきた。けいこで胸を借りるだけでなく、行動を共にすることで受ける影響がどれほどのものであるか、想像に難くない。
今年最初のGI戦、フェブラリーSは大波乱で、最低人気の4歳馬コパノリッキーがスタンドの度肝を抜いた。管理する村山調教師は、2年前にテスタマッタでフェブラリーSを勝っていて、史上初の連覇を狙った去年、この先輩チャンピオンと一緒に東上していた。ダートのヒヤシンスSで3着したときだが、村山師は「テスタマッタにいろいろ教えてもらったのかもしれない」と語っていた。ヒザの骨折でスランプに苦しんでいるうちに、人気はすっかり落としていたが、これに騎乗した田辺裕信騎手が、当初はテスタマッタに騎乗予定だったのが、直前に屈腱炎を発症し引退となり、2分の1の抽選で出走にこぎつけたコパノリッキーの手綱を取ることになったというのも、なにか不思議な思いがした。
群雄割拠のダート頂上決戦は、ニューヒーローの誕生となったが、先輩チャンピオンとの触れ合いの中でなにをつかんだのか聞いてみたい。人間の場合ためにならない人は、易きにつく人、人当たりばかりよい人、口先だけうまい人と孔子は述べている。その対向にあるのが、剛直、誠実、教養だとすると、馬ならどうなるか。
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長岡一也
ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。