すでに2歳馬が560頭入厩

2014年03月05日(水) 18:00 24


◆一昨年より待望の坂路コースが使用できるようになり、飛躍的に調教が楽になったと関係者は口をそろえる

 先ごろ、道営ホッカイドウ競馬の門別トレセンを訪れた。そこで何人かの厩舎関係者と会い、さまざまなお話を伺った。2月末現在、門別にはすでに560頭もの2歳馬が入厩しており、日々調教に余念がない。来る3月19日からはいよいよ能力検定も始まる。日本一早い2歳戦が行われるのもこの門別で、どこの厩舎も活気に溢れている。

 基本的にはダートコースを使用して調教が行われるが、一昨年より待望の坂路コースが使用できるようになり、飛躍的に調教が楽になったと関係者は口をそろえる。従来、寒冷地でありながら屋外施設ばかりで調教していたのだから、屋根付きの坂路コースは画期的だったと誰もが絶賛する。とりわけ悪天候時には存在感が大きい。天候に左右されずに調教メニューをこなせるのは何よりありがたいという。

ゲート練習風景

ホッカイドウ競馬田中厩舎のゲート練習風景(写真は本文とは関係ありません)

 昨年、ホッカイドウ競馬は中央競馬IPATによる馬券発売などが後押しとなり、売り上げを伸ばした。台風で中止となった日が1日あり、全79日間の開催で140億円余りを売り上げた。1日平均では、今や南関東4場、兵庫に続く位置まで上がってきている。もっとも南関東が圧倒的に多く、兵庫が2億円をやや上回る他は1億円台でずらりと並ぶのだが。

 今年のホッカイドウ競馬は4月23日(水)より開幕し、11月13日(木)までの80日間(15開催)が予定されている。ただし、開催日程はかなり変則的で、2歳戦に特化している分、古馬陣が手薄になっているのは確か。そのために、出走体制の整った2歳馬の数が揃わない春先は、5月いっぱいまで週に2日の開催が続く。

 なお2歳戦における認定競走は昨年同様の118レースを予定しているという。うち重賞競走は9レースで1着賞金は250万円~500万円。上級認定競走14レース各200万円、フレッシュチャレンジ競走60レース150万円、アタックチャレンジ競走は80万円という内訳だ。

 これら認定を勝てない組は、未勝利戦に回ることになるが、それらの1着賞金は30万円。(9月23日の第12回開催以降は40万円)

 やはり認定競走を勝てるかどうかで、その馬の評価が決まるため、まずそこが大きな関門となる。「大半の2歳馬が夏~秋以降は他の競馬場にトレードされて行きますから、認定を勝っているかどうかというのはかなり大きな要素になりますね」とはある調教師の弁。

「何せ、みんなよくレースを見てますから。ちょっと強い勝ち方をしたり、まして重賞なんか勝とうものならいきなり高い値段のオファーが来ますからね」とも聞いた。

田中厩舎、齋藤厩舎の調教風景

ホッカイドウ競馬田中厩舎、齋藤厩舎の調教風景(写真は本文とは関係ありません)

 ひとつの目安としては、重賞を複数勝つか、あるいは交流重賞で勝ち負けできる2歳馬になると2000万円~3000万円もの価格に跳ね上がるという。そこから価格が下がって行き、認定競走を勝ち切れなかったクラスになれば数十万というような価格になってしまう。

 ただ、馬主の多くは生産者などの牧場関係者で、基本的には「値段がつけば売りたい」事情の人が少なくないのだという。「だから最高の状態でデビューさせて、まず認定を勝たせるのが最初の目標になります」とも聞いた。

 560頭の2歳馬はあくまでも今の時点での数字で、門別の場合は、「かなり出入りが激しい」のが特徴でもあるらしい。「つまり、ここを育成牧場代わりに使う馬主さんが結構いるんで、そこがちょっと複雑ですね」という声もある。本来ならば入厩した2歳馬のすべてがホッカイドウ競馬からデビューするのが筋だが、現実には、芝で見込みのありそうな馬や、思いの他能力の高そうな馬は、ホッカイドウ競馬に登録せずに他場へ転厩して行く例もあるらしい。

 その裏には預託料の安さがある。門別の場合、基本料金が月に15万円。そこから各種のサプリメントや装蹄代、治療費などを加算しても、だいたい16~18万円程度に収まるという。「日高でも胆振でも、民間の育成牧場だとこれでは済まないでしょうから割安に預けられるというメリットは大きいですね」とある調教師が言う。「できるだけお金をかけないようにして、なるべく早い時期に使い出し、できれば認定でも勝たせてさっさと売ってしまいたい」のが多くの生産者馬主の本音だ。とはいえ、全国的には圧倒的に多い認定競走を配分されているものの、そこを勝ち上がるにはかなりの能力が求められる。売り上げに比べるとホッカイドウ競馬の2歳戦はハイレベルなのだ。

 「だいたい中央から未勝利クラスが見切りをつけられてここ(道営)に降りてくるのが5月~6月頃です。それまではどうしても古馬が足りなくて、レースを組むのにも大変だと思いますよ」とある調教が言う。売り上げ増に応じて古馬のC4クラスの1着賞金も15万円から20万円へと改定されたが、「せめて50万円くらいになればねぇ」との声も聞こえた。

 2歳戦に関しては今年新たに重賞が2つ新設される(ソメスサドル杯フルールカップ、牝限定、1着賞金250万円、8月14日。サッポロクラシックカップ、1着賞金300万円、10月21日)ことになっており、加えて出走手当も2歳馬に関しては昨年から1万5千円増額され6万5千円となった。その一方で古馬の場合は出走手当も据え置きとなり、春先の出走頭確保が課題になりそうな気配である。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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