2014年03月07日(金) 18:00
◆一段とたくましく成長したハープスター
クラシック第一弾「桜花賞。4月13日(日)」が5週間後に迫り、重要なトライアルが行われる。過去10年の桜花賞1-2着馬20頭のうち、ぴったり半数の10頭がこのチューリップ賞に出走していた。
馬券に関係する桜花賞の1-3着馬30頭に範囲をひろげても、約半数に相当する14頭がチューリップ賞に出走していた馬。GI桜花賞を展望するときにベースになるこのレースは真剣に検討し、かつ、入念に内容を振り返らなければならない。
今年は、牡馬もそんなムードだが、ランキング上位の有力候補がここまでのところ、かなり限られていて、なおかつ直前に出走するレースも分かれている。
ここに至るまでの公式ランキング(獲得レーティイグ)上位は、「レッドリヴェール110、ハープスター109、フォーエバーモア108」がベスト3で、4番手以降は105以下に固まって並んでいる。上位は男馬と互角以上のレーティングである。さすがにこれはオープンで2-3戦の内容が評価の対象なので、まだまだ秘める本当の能力とは一致するものではないが、勢力図の格好の目安にはなる。
新潟2歳Sで見せた上がり3ハロン「32秒5」が示す能力は、さすがにここでは抜けている。あくまで2歳の8月末のことではあるが、3馬身突き放したイスラボニータ(現在は男馬の最有力候補の1頭)とは、性能が異なるように映った。12月の阪神JFではレッドリヴェールにハナ差及ばずの2着にとどまり、3着フォーエバーモアともクビ差だったが、ゴール寸前の爆発的な切れはケタちがい。インに突っ込んだため、馬群をさばくのに気をつかったところがあった。
負けて強しとはこのことで、男馬相手に不良馬場の札幌2歳Sを差し切ったレッドリヴェールも、早めに動きながら粘り込んだフォーエバーモアもそれは素晴らしかったが、スケール断然はハープスターと思えた。冬のオーバーホールと再鍛錬で、体つきは一段とたくましく成長している。
◆川田騎手にとっても正念場
今回は「外に出すレースをしてくれ」の強い指示が出ている。新潟2歳Sは、自身の前半1000m通過は「62秒0」で追走のスローで、上がり32秒5(最終2ハロンは楽々と連続10秒台)だから、流れは関係ない。この組み合わせなら、9分くらいの状態としても確勝級の評価でいい。
ただ、3歳春の牝馬の体調変化、期待通りにクラシックで能力を全開できるかどうかにはきわめて難しいところがあり、チューリップ賞組が断然、桜花賞の中心になることは間違いないが、チューリップ賞が重賞になって過去20年、この最重要トライアルを勝った馬は本番の桜花賞で、なんと【2-2-0-13】、不出走3頭。驚愕の数字が残されていることは、レース前から認識しておきたい。チューリップ賞と桜花賞を連勝したのは、2001年のテイエムオーシャンと、2009年のブエナビスタ。たったの2頭だけ。ウオッカ、スイープトウショウ級でさえ負けている。本番には出られなかった馬が3頭もいる。最重要なトライアルを勝ったのに、本番で4着以下に沈んでしまった馬が13頭も存在する。これほどクラシックの難しさを象徴する数字はない。
すでに阪神JFで無敗馬ではなくなっているから、並みの人気馬ならここは負けてもいいだろうが、ハープスターはそういう立場の人気馬ではない。川田騎手は日曜日の中山では、やっぱり候補の人気馬トゥザワールドに騎乗する。
今年は現在26勝、2位と5勝差の騎手ランキングトップ。川田将雅騎手(28)は信頼に足るトップジョッキーとなれるかどうかの正念場を迎えている。代打騎乗でオークスをぶっちぎったジェンティルドンナや、ブエナビスタ級の素質馬と信じて、「走るのはハープスターであって、自分は補助するのみ」。ひきつったりしないで乗りたい。
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柏木集保
1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。