週刊サラブレッド・レーシング・ポスト

2003年10月21日(火) 14:46

 今年で20回目の開催を迎えるアメリカ競馬の祭典「ブリーダーズC(10月25日・サンタアニタ)」。8レースの見どころを御紹介しよう。

 幕開けのディスタフ。19日夜、前年の覇者アゼリの陣営が回避を表明。このまま引退の公算大ということで、そうなると、人気は東海岸でG1・4連勝中のサイトシークに被る可能性が高い。これを、前走レディーズシークレットHでアゼリを破ったゴットココ、スピンスターS連覇のテイクチャージレディらが追う展開だろう。個人的には、前走レディーズシークレットHで1着入線→4着降着のイロラヴが面白いと思っている。ゴール前で内によれたのは、休み明けで馬が苦しくなったからで、一叩きされた本番は真っ直ぐ走って、少なくともレディーズシークレット組には負けないはずだ。

 8レース中最も固い軸がいるのがジュヴェナイルフィリーズ。ここまで3戦3勝、前走オークリーフSの内容を見るとまず負けないだろうと思われるのがハーフブライドルドだ。これに続くのが、16馬身差で制した前走ケンタッキーCジュヴェナイルフィリーズを含めて2戦2勝という、ボブ・バファート厩舎のクラスアバヴ。東海岸の最終プレップ・フリゼットSの覇者ソサエティセレクションが3番手の評価。

 マイルは、芝部門なら欧州馬という選択は頷けるのだが、オッズを掲げる各社の多くがシックスパーフェクションズを抑えてオアシスドリームを最上位と見ているのはどういうわけか。後方からくるシックスパーフェクションズが小回り馬場で馬群をさばけない心配があるのは重々わかっているが、かと言って、5FのナンソープSと6FのジュライCの勝馬で、もう1年以上6ハロンを超える距離を走っていないオアシスドリームを本命にするのはいかがなものか。前走大敗の要因がはっきりしないリフューズトゥベンドにも信頼性がない、となれば、アメリカ馬という選択肢も充分ありそうだ。個人的には、ツボにはまれば途轍もなく強いスペシャルリングの一発に期待している。

 スプリントは、オルデバランとシェイクユーダウンの「2強」ムード。これまで強敵相手の対戦はないものの、6F戦では圧倒的なスピードと安定感を誇るシェイクユーダウンをとるか、本来はもう少し長い距離が良いものの、超一流を相手に実績を積み重ねてきたオルデバランのどちらを取るかは、迷うところだ。ここを第2希望にしているコンガリーがこちらに廻ってきた場合は「3強」になるのだろうが、6F戦を走るのは2歳の9月以来。超ハイペースについていけるかどうかは疑問である。

 欧州勢と北米勢が拮抗した人気となっているのがフィリー&メアターフだが、芝のレースならやはり欧州勢に利があるような気がする。能力的には前走牡馬相手の愛チャンピオンSで僅差の3着となったイズリングトン最上位で間違いないと思うのだが、不慣れな小回りに戸惑った昨年の二の舞も充分に考えられる。仏1000ギニー馬ミュージカルチャイムスにも、前走イエローリボンSにおけるレース振りを見ると、同様の事が言えそうだ。と言うことで、欧州勢なら先行力のあるメッツォソプラノが面白いのではないかと見ている。前走イエローリボンSを含めて今季G1・2勝のテイツクリーク、アーリントンのビヴァリーディーSの勝馬ヒートヘイズなど、ここはアメリカ勢にも強者が揃っている。

 ジュヴェナイルは、ノーフォークS勝馬ルーラーズコートも、シャンパンS勝馬バードストーンも、ブリーダーズフューチュリティ勝馬ユーロシルヴァーも不在となれば、フューチュリティS圧勝のクヴェーに人気が偏るのも致し方ないかもしれない。前走シャンパンS2着で2番人気が予想されるチャペルロイヤルでは、逆転は難しいだろう。それなら、前走サンタアニタの7Fの特別をぶっち切ったレースフォーグローリーに、未知の魅力を感じる。

 この原稿を書いている段階では、クロスエントリーのどちらに出るかわからないファルブラヴ。その動向次第で勢力分布が大きく変わるのがターフだ。こちらに廻ってくれば、今季ここまでG1・4勝という実績から、この馬が本命になろう。前年の覇者で、前走凱旋門賞3着のハイチャパラル、アーリントンミリオン、ターフクラシックと北米でG1連勝中のスラマニも差はない。アメリカ勢では、ターフチャンピオンシップの1、2着馬ストーミングホームとジョハーが代表格。

 抜けた馬がおらず、群雄割拠の様相を呈しているクラシック。常識的に考えるなら、前走パシフィッククラシックでキャンディライドの2着だったメダグリアドローが最上位だろう。ダート戦に限れば今季4戦4勝のパーフェクトドリフト、夏から秋にかけて急上昇の3歳馬テンモーストウォンテッドの2頭がこれに続く。興行的盛り上がりという点では、ジュリー・クローン騎乗のファニーサイドが最後を締めるのが理想なのだが。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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