第46回ばんえい記念

2014年03月26日(水) 18:00

ばんえい記念

3頭による直線の攻防/ばんえい記念


◆いつもとは違った華やいだ雰囲気が漂う「ばんえい記念」当日

 3月23日(日)、帯広競馬場で「第46回ばんえい記念」が行われた。北海道に接近した大型低気圧のせいで道東はその2〜3日前には大荒れの空模様となったが、この日は何とか天候も回復し、朝から良く晴れてまずまずのコンディション。いつもの年よりもファンの出足が早く、午前中の割に早い時間帯から駐車場が混雑し始めていた。

 この年度末の大一番を目当てにわざわざ本州方面から足を運ぶ熱心なファンも数多い。そんな中には、ばんえい記念当日の朝調教見学をセットにしている人々も少なくない。この日、集合時間の午前6時には、異例の2班編成で総勢30人ほどの調教見学となった。

 どうせ現地入りするのならば、前日から泊り当日の朝調教を見たくなる。だが、春分の日ともなれば、日の出の時刻はかなり早くなり、午前6時にはすでに太陽が顔を出してしまっている。朝の日の出前の時間帯に、全身から汗を噴き出した馬たちが次々に橇を曳きながら眼前を通って行く姿がシルエットのように浮かび上がる。そういう光景が見られるのはこの時期だとおそらく午前5時前くらいのことであろう。間近で調教を見学するにはむしろ明るい方が良いわけだが、写真撮影を目的としている人ならば1月くらいの日の出の遅い時期の方がベストかも知れない。

 第1レース発走は午前11時。すでにこの時間帯から競馬場入りしているファンがかなりいて、パドックやエキサイトゾーンには人垣ができている。いつもよりも出足が早いことが分かる。

 スタンド内も大変な人だかりであった。いくら晴れているとはいえ、外にずっといるとまだ寒風が体に堪える。発走時間になると外に人が出てきて声援を送るものの、レースが終わり、確定すると一斉にまた寒さをしのぐためにスタンドの中に人が入って行く。その繰り返しであった。この時期の北海道は、まだ戸外で過ごすにはさすがに寒い。

 大半のレースが企業や団体の協賛レースになっている。第5レースの前には、ばんえい記念に騎乗する10人の騎手がエキサイトゾーンに並び、1人ずつ紹介される。また地元の道立池田高校吹奏楽部の生徒が生演奏を披露する場面もあった。いつもとは違った華やいだ雰囲気が漂う。

 メインのばんえい記念は第11レース。発走は5時15分。西に大きく太陽が傾き、ほとんど日没寸前くらいの時間帯のスタートであった。ファンファーレは恒例となった地元の陸上自衛隊第5音楽隊が務める。スタンドを埋めたファンが見守る中を定刻通りにゲートが開いた。

インフィニティー

パドックでのインフィニティー

 1番キタノタイショウが単勝1.3倍と断然の1番人気。8番ニュータカラコマが7倍、9番ホクショウダイヤ10.4倍と続き、やや差がある。1トンを曳くレースはこのばんえい記念だけであり、他の重賞とは一線を画する。折からこの日は西寄りの風が吹き、馬場水分は2.7%とかなり乾いた馬場。ばんえいの場合は、水分が少なく乾燥している方が「重馬場」ということになる。それだけ橇が滑りにくくなるからだ。

 レースを引っ張ったのは人気のキタノタイショウ。しかし第二障害に取り付いて、まず坂を上がってきたのは6番ホリセンショウ、ほとんど差がなく続いたのは7番インフィニティーであった。西日を真正面から浴びた各馬が、必死に橇を曳きながら、第二障害に取りかかり、乗り越えようとする。多くのファンがレースの進行に合わせてエキサイトゾーンをゆっくりと歩きながら声援を送る。

 インフィニティー、ホリセンショウ、5番フクドリの3頭がまず坂を下ってくる。キタノタイショウはやや遅れた。ゴール前まで止まることなく橇を曳いてきたインフィニティーがそのまま1着でゴールし、続いてフクドリ、ホリセンショウという順でレースが確定した。断然1番人気のキタノタイショウが、ゴールしてからその場でへたり込む場面もあった。

キタノタイショウ

ゴールしてからその場でへたり込んでしまったキタノタイショウ

 ばんえい記念は最後の馬がゴールするまでファンが声援を送る。今年は10番シベチャタイガーが最も遅れてゴールしたのだが、全馬が無事にレースを終えた時には場内から健闘をたたえる拍手が巻き起こった。

 ばんえい記念を6番人気で制したインフィニティーは牡8歳。父フジエーカン、母クインフェアーという血統で金田勇厩舎所属。浅田達矢騎手が騎乗。金田勇調教師は2010年のニシキダイジンに続いて2度目の優勝。浅田達矢騎手はこのレース初騎乗で初優勝であった。浅田達矢騎手は36歳、奈良県明日香村出身という変わり種で、馬の世界に飛び込んだのは20歳を過ぎてから。元野球少年で180センチと大柄である。また、6番人気、8番人気、5番人気という順の入線で波乱となったために、三連単は50万円を超える高配当を記録した。

ばんえい記念口取り

ばんえい記念口取り風景

 翌24日(月)でばんえい競馬は2013年度の全開催を終了。前年比11.1%増の116億6264万円を売り上げた。また入場人員も前年比5.8%増の26万8693人と健闘した。

 ナイター開催や薄暮開催などで中央競馬や他の地方競馬と発走時間がずれたことにより、インターネット発売が全売り上げの半分以上を占めた。その半面、本場での売り上げが逆に3.1%減少し15億9959万円にとどまった。入場人員が増えているのに本場の売り上げが減少しているのは、J-PLASEを利用する中央競馬ファンの割合が高いことに原因があるのだろうか。本場のマイナス分をネット発売でカヴァーしている形だが、この傾向は今後も続きそうだ。普段の帯広競馬場はいかにもファンの平均年齢が高い印象が強い。

新たなファン層の開拓も難しく、本場での売り上げをいかに確保して行くかが今後の課題であろう。

 なお、新年度(2014年度)は全153日の開催予定で4月13日よりスタートする。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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