POG取材ピーク

2014年04月02日(水) 18:00


◆3月27日はビッグレッドファームとコスモビューファームでの合同取材日

 今年は各地で複数の牧場の取材が同時進行する事態となり、どの媒体も人員の調達と確保に頭を悩ませている。私の住む浦河地区の場合は、主としてBTC界隈の民間育成牧場への取材が中心となり、だいたい10か所ほどが対象となる。

 おそらくこれくらいが精いっぱいのところであろう。育成牧場の数はもう少し多いが、それぞれPOG取材に対する受け止め方の違いがあり、最初からお断りされるケースもあるので、現状ではこれ以上取材対象牧場を増やせないような気がする。

 基本的に今は合同取材が主流になっている。牧場にとっても、その都度媒体ごとに対応するのはいかにも煩わしく、ならば日取りを決めて、〇月〇日〇時に集合して下さいということになる。去る3月27日(木)は、新ひだか町(及び新冠町)のビッグレッドファームとコスモビューファームでの合同取材日であった。

 ビッグレッドファーム真歌に午前8時集合。準備が整い次第、すぐに立ち写真の撮影が始まった。カメラマンは7人。ということは最低7社が集まったことになる。やや霧の濃い朝だったが、約1時間半かけて予定の15頭が次々に登場した。あらかじめ取材陣にはPOG取材対象馬リストが配布されている。競走名、父名、母名、母父名、性別、毛色、生月日、予定預託厩舎、馬主、生産者と、ここで配布されるリストには必要なプロフィールがほぼ完全に網羅されており、丁寧に馬体重も手書きで追記されている。

 厩舎と厩舎の間の、背景に坂路コースの壁が見える場所が立ち位置になり、そこで全馬が撮影を行なった。時々、背後の坂路コースを左から右に調教馬が駆け上がって行く。取材はあくまで牧場業務を邪魔しないように進めなければならないから、この場合、優先されるのは調教である。

ビッグレッドファーム真歌

ビッグレッドファーム真歌での撮影風景

 毎年のことだが、ビッグレッドファームの場合、冬場でも夜間放牧を実施しているせいか、どの馬も平均して冬毛を蓄えている。また調教をびっしりと積んでいるため比較的馬体はほっそりして見える。見方によっては貧弱にも映る馬体だが、もちろんそれがただちに競走能力と直結するわけではない。むしろより「実戦向きに仕上げられている」と言った方が正しいかも知れぬ。その辺の判断が難しい。

 9時半をまわったくらいに撮影が終わった。この後、調教担当者や責任者を囲んでの各馬の現況を聞き出す囲み取材である。POG取材の場合、マイナス要素にはできるだけ触れず、良い部分だけを取り上げるのが基本だ。場合によってはネガティヴなコメントが多く口から出てくる馬もいるのだが、そこは表現ひとつである程度フォローできる。

「わがままで気性が荒い」馬は「体調が良く元気いっぱい」というような書き方にする。

「まだまだ幼く、子供っぽい」馬は「これから成長の余地が大きい」とでもしておく。

 写真撮影とコメント取りがワンセットで取材が終わる。その後、車でコスモビューファームに移動し、同じ流れで取材が行われた。午前中はここまでで終了した。

 午後は1時半より新冠町明和のビッグレッドファーム明和に場所を移して、午前中と同様に立ち写真の撮影からスタートした。この日、すべての取材が終わったのは午後5時を回った頃であった。

 各媒体とも、同じ条件での取材となるため、そこからどのように個性を出して行くかが難しくなる。それぞれ誌面の都合上、掲載できる頭数に制限があるので、工夫を凝らすとすれば、どれを取り上げ、どの馬をカットするかの取捨でしかなくなる。合同取材主流では、独自の取材というのは実際問題としてまず不可能に近いから、そんな中で存在意義をアピールするのは本当に大変な作業となる。

 ところで4月に入り、いよいよ3歳GIが目前に迫ってきた。多くのPOGグループは、ダービーからダービーまでの期間を設定し、仲間内でポイントを争う形式だと聞く。だとすれば、残る期間は4月と5月の実質2か月間しかない。そろそろ有力馬が出揃った時期でもあるが、一方で、未だに未出走馬や未勝利クラスも登録上は3000頭近くいる。

 1勝クラス(500万下)で東西合わせて721頭、その上のオープンクラスに至っては147頭しか存在しない。多くの馬にとってはダービーがさしあたり最大の目標となるはずだが、現実はかなり厳しく、実際は1つ勝つだけでもいかに大変なことかと改めて思い知らされる。未勝利クラスにとっては、まず無事に1つ勝ち上がることが当面の目標だ。

 阪神競馬場の「桜花賞」は4月13日、中山の「皐月賞」はその翌週。毎年この時期になると一年経つのが本当に早いことを今更ながら実感させられる。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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