育成調教技術者養成研修第32期生、開講式

2014年04月09日(水) 18:00

育成調教技術者養成研修課程に入講する32期生

育成調教技術者養成研修課程に入講する32期生


◆初心を忘れず、精進して頂きたいと願うばかりだ

 4月8日(火)。浦河にあるBTC(公財・軽種馬育成調教センター日高事業所)にて、今年度新たに育成調教技術者養成研修課程に入講する32期生が、開講式に臨んだ。

 これは生産地で不足する騎乗技術者を養成するため、平成4年よりスタートした研修制度で、当初は6カ月の期間であった。春に入り秋に修了、もしくは秋から翌春までというように半年ごとの入れ替えだったため、最初の7年間で1期生〜14期生までを送り出している。現在の1か年に研修期間が延期されたのは平成11年春入講の第15期生からだ。一時(平成11年〜14年)、九州の宮崎県にあるJRA宮崎育成牧場でも「宮崎コース」を設定し研修生を受け入れたことがあり、そこを修了した29名を含め、今春修了式を迎える第31期生まで、合計443名(うち女子54名)がこの研修制度を利用して騎乗技術を学んでいる。

 今回、開講式を迎える第32期生は、計21名。男子17名、女子4名という内訳で、年齢は18歳から28歳とやや幅がある。他に25歳が2人、23歳が1人。それ以外は18歳から22歳までに集中している。このところ志願者は40名〜50名程度で推移しており、かつて競馬ブームだった頃のような爆発的な人気はないものの、今期の受験者は49名で合格率は5割を切る。東京競馬場などで実施される「BOKUJOB」フェア(昨年は7月下旬)等でこの研修制度の存在を知り、体験入学などを通じて理解を深め受験するに至った若者が多いらしい。

 やや緊張した面持ちで開講式を迎えた21名は、それぞれ来賓から祝辞をもらい、これから始まる1か年の研修生活に思いを馳せていた。出身地別では、北海道が1名と少なく、他の20名はいずれも本州出身者だ。最も遠いのは福岡県からやってきた定野航希君(18歳)で、その他、広島、大阪、京都、滋賀など関西以西からの出身者も散見する。

 開講式に配布された名簿には、顔写真とともにそれぞれの将来への抱負を簡単にまとめてあり、非常に興味深い。生産地の育成現場に即戦力として参入することがまず彼らに求められていることだが、それにとどまらず大きな夢を抱く若者も少なくない。例えば「調教師を目指し、GI馬を手掛けたい」であるとか「JRAの調教助手になって多くのレースで勝たせたい」あるいは「日本を競馬の先進国にする」ことを目標にしている研修生もいる。それぞれが明確な目標を持ってここの門をくぐってきており、初心を忘れず、精進して頂きたいと願うばかりだ。

やや緊張した面持ちで開講式を迎えた21名

やや緊張した面持ちで開講式を迎えた21名

 1年間はあっという間に経過する。無我夢中で訓練に励み、日々の作業に追われているうちに季節はいつしか夏から秋へと変わり、冬を迎える頃にはゴールがすぐそこまで迫ってくる。年が明けると自身の就職先を決めなければならない。1年間で即戦力を養成するのがこの研修制度の目的だから、ぐずぐずと逡巡している暇などない。

 彼らを迎え入れるのは4名の教官と42頭の訓練用乗馬たちだ。ここでは、先に新しい研修生が入講し、今年の場合だと、その10日後に1年先輩たちがここを出て行く。重複期間が設けられているのは、その間、馬の管理や厩舎の作業手順などを引き継ぐためである。基本的な作業は自分たちで何から何まで行なうのが原則だから、覚えなければならないことは多岐にわたる。未経験の慣れない作業。初めて触る馬たち。戸惑いの連続のはずだが、そこを乗り越えなければ次の一歩が踏み出せない。とりわけ、騎乗訓練はことの他重点的に仕込まれる。常歩から速歩、そして駈歩へとステップアップするのに2カ月もかからない。6月には研修所内にある1周800mのダートコースに出て、みっちりと騎乗姿勢を叩き込まれる。

 半年経って秋になる頃には、JRA育成馬の馴致や騎乗実習がメニューに加わってくる。慣れた訓練馬と違い、そこでは1歳馬相手の実際的な訓練となるため、高い応用力が求められる。個体差の大きな1歳馬相手が「生きた教材」になるわけで、より研修内容は高度なものになる。年が明けた頃からは、それらのJRA育成馬に騎乗しBTC内の坂路調教も待っている。立ち止まることが許されない濃密な1年間をようやく終えた頃に修了式である。

 前述したように今年は来る18日(金)が昨春ここの門をくぐり入所した31期生たちの修了式だ。1年間の訓練の成果をお披露目する晴れ舞台である「実技査閲」も予定されており、次々回にはその模様もお伝えできると思う。

バックナンバーを見る

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

新着コラム

コラムを探す