JRA育成馬展示会

2014年04月16日(水) 18:00

JRA育成馬展示会

JRA育成馬展示会の様子


◆毎年関係者の関心が高く、今年のブリーズアップセールも賑わうことが予想される

 去る4月14日(月、JRA日高育成牧場(浦河町西舎)にて、来る4月29日に中山競馬場で開催されるブリーズアップセールに上場を予定している80頭のうち、日高で育成された2歳馬57頭が関係者に展示された。牡27頭、牝30頭が、午前10時より5班に分けられ、厩舎横の広場に並べられた。これらの2歳馬は昨年の1歳馬市場にてJRAが購買したものが大半で、それぞれの生産者などがすっかり見違えるように成長した生産馬と対面する光景があちこちで見られた。この展示会に集まったのは200人強。生産者の他、近隣の育成牧場関係者や中央競馬の調教師、馬主などの姿もあった。

 1班の展示時間は15分程度。きっちりと時間通りに馬が入れ替わり、常歩で隊列を組んだ展示馬がいなくなると同時に次の班が広場に入ってくる方式で、いささかの狂いもなく予定通りに展示が進行する。参加者は名簿を片手に、丹念に各馬の体型や脚元などをチェックしながら値踏みをするように見て歩いた。これだけまとまった数の2歳馬が一堂に会する機会はあまりなく、しかもJRAの豊富な人材と完備した施設で育成された2歳馬たちであり、毎年関係者の関心が高い。とりわけ、昨年から今年にかけて現3歳世代の2つのブリーズアップセール出身馬たちは重賞(地方交流競走含む)2勝を上げており、3月末現在で17頭が21勝となかなかの活躍である。こうした事情もあり、今年のブリーズアップセールも賑わうことが予想される。

 比較展示が予定通り終わり、約30分後より、場所を移動して日高育成牧場に隣接した1600mダートコースにて騎乗供覧が行なわれた。57頭が展示されたうちの43頭が、3つの班に分かれ、基本2頭併せで向こう上面からスタート。キャンターで流してきた後、徐々に速度を増し、直線に入ってから2ハロン400mをトップスピードで駆け抜けるのだ。29日の中山競馬場でもセール前には同様に公開調教が披露されることになっているが、立ち姿や常歩だけでは判断できない脚さばきや口向きなどをこの騎乗供覧である程度判断できるため、多くの人々がそのまま居残って埒沿いや観覧席に陣取り、各馬の走りをチェックしていた。

 HBA主催の2歳トレーニングセールでは、公開調教で時計を出してアピールする傾向が強いのだが、ここではそれほど目いっぱいには追われない。2ハロンの合計で25秒〜26秒台あたりが標準的な時計で、ゴール前1ハロンも12秒を切ってくるケースはほとんどない。ある程度余裕を持たせている印象で、あくまでもこの騎乗供覧は、走るフォームのチェックが目的である。

 そんな中、最速の時計を出したのは、2ハロンの合計では6番フレンドリータッチの12(父ボストンハーバー、牝)と58番バヒラーの12(父ディープスカイ、牝)のペアで、12秒5と12秒、計24.5秒であった。

最速の時計を出したペア

最速の時計を出したのは6番フレンドリータッチの12(父ボストンハーバー、牝)と58番バヒラーの12(父ディープスカイ、牝)のペア

 またゴール前1ハロンでは牡の組の38番モントレゾールの12(父ステイゴールド)と43番シャンパンセラーの12(父アルデバランII)、及び1番シャトルシャロンの12(父ヨハネスブルグ)と63番プルームリジェール(父ハーツクライ)がそれぞれ11秒9を出していた。

1番と63番のペア

38番モントレゾールの12(父ステイゴールド)と43番シャンパンセラーの12(父アルデバランII)のペア

1番と63番のペア

1番シャトルシャロンの12(父ヨハネスブルグ)と63番プルームリジェール(父ハーツクライ)のペア

 もちろんこれが直ちにブリーズアップセールにおける落札価格に反映するわけではなく、さらにはセールでの価格そのものが必ずしもその後の競走成績に結び付くわけでもない。現3歳世代に関しては、むしろ安い落札価格の馬の活躍が目立った。函館2歳ステークスを制したクリスマスは368万円のバゴの牝馬、ホッカイドウ競馬で行われた地方交流重賞のエーデルワイス賞を制したフクノドリームは525万円のヨハネスブルグ牝馬である。先週の桜花賞に出走し6着と健闘したアドマイヤビジンもブリーズアップ出身だが、こちらは1995万円とやや高額だったくらいで、中京2歳ステークスを勝ったグランシェリーは714万円だから、出身馬の2勝を挙げている4頭中3頭が落札平均価格(886万円余)以下ということになる。

 何が走るか分からないのが馬とはいえ、こうしたデータは、いかに馬の能力を見極めることが難しいのかということを改めて思い知らされる。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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