2014年04月24日(木) 12:00
◆よく眠るイスラボニータ
心は物を離れてはなく、また物も心を離れてはあるまい、これは民芸運動創始者で日本民芸館をつくった柳宗悦のことばだが、民芸品の魅力は匿れている力にこそ潜んでいるとも述べている。サラブレッドは人間のつくった最高の芸術品なのだから、この論で言えば、どう鑑賞するかと問われているようなものだ。それも外観だけでなく、内なるところに気を配ってと。
皐月賞を勝ったイスラボニータは、柔軟でバランスのいい走りをするが、これは体の柔らかさによるものだと思う。パドックで見た印象もそうだった。学習能力が高く、少しずつ大人になってきていると伝えられていたが、レースでの折り合いのつけ方から十分にそれが伺えた。未知の距離に初の右回りコースと課題もあったが、全くそれは問題なかった。さて、その内なる部分、イスラボニータの心について知りたくなってくる。馬語なるものがあるとすれば、馬はその身体全体で話をしていると言うそうだが、なかなか語り合うことは出来ない。
普段の生活ぶりを教えてもらい、そこから心の内を探るしかない。話によると、イスラボニータは早朝は本当によく眠っているそうだ。人が近寄っても起きない、だからそうっとしてやっていると。そう聞いてどんな想像が出来るだろうか。微笑ましい皐月賞馬ではないか。
オークスTRの旧4歳牝馬特別がフローラSに改められた年、一番人気はミモザ賞を勝ったレディパステルだった。レースは平均ペースを4番手で流れに乗ったフラワーC2着のオイワケヒカリがいち早く先頭に立ち、中団から出てきたレディパステルとの競り合いに勝っていた。敗れたレディパステルに騎乗していたデザーモ騎手の手綱はやや引っ張り気味。スタートで気合を入れたらかかり気味になったと述べていた。最後に伸びを欠いたのはそのせいで、レディパステルの内面を覗けたのだが、デザーモ騎手のオークスの戦い方にも思いが及び、本番は後方につけて外国人騎手で初めて日本のクラシックを勝ったのだった。
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長岡一也
ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。