2014年05月08日(木) 12:00
◆思いに変化をつけて
あまりにも思いが強く、これはこういうものだと決めつけていることがある。自分独自の心のフィルターを通していくうちに、それが自分の動かぬ見方になっていく。こうなると変化に弱い。般若心経では、何のこだわりもなくありのままに物事を見るその心を「空」(くう)と説いているが、その「空」とは心構えのようなもので、物事には永遠不滅はなく、条件によって刻一刻と変化するものだと諭してくれるのだが、これがなかなか面白いのだ。どうしたってもこだわりを捨てきれぬ自分がいて、それが迷いを生んであっちにふらふらこっちにふらふらとその思いは堂々巡り。挙句の果てつかんだ結論が大間違い。そう、競馬によくある話だ。
天皇賞のフェノーメノの勝利に思うこと大で、久々の前走ではパドックからテンションが高く、そのための大敗であったと捉えていれば、次なる変化に思いが及んでいてもおかしくなかった。何と言っても昨春の天皇賞馬なのだ。屈腱炎から立ち直ったウインバリアシオンは、前走で完全復調し内面もしっかりしたとなれば実績をそのまま受け取れる。ホッコーブレーヴの3着は、実績の乏しかった中山でいい脚を最後までみせた日経賞2着から、京都なら、初めてでも中山よりはいいと考えられた。キズナにとらわれすぎて、自在に思いに変化をつけずにいたと言わざるを得なかった。
さて、東京競馬場のコースが改装された平成15年のNHKマイルカップで、伏兵ウインクリューガーが勝ったシーンを思い出してみたい。西の出世レースのアーリントンカップを勝ちながら、前走の毎日杯大敗で人気を下げていた。マイルでは全勝したタイキシャトルの産駒、二千米は合わず皐月賞をパスした事実を重く捉えるべきだった。2着エイシンツルギザンともども、この2頭だけが芝のマイル重賞を勝っていたのだから、終ってみれば不思議でもなんでもなかったのだ。思い込みを捨てれば心は軽くなる。思いに変化をつけて、ありのままをつかみとりたい。
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長岡一也
ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。