2014年06月30日(月) 18:00 106
◆秋は府中でGIを狙うよりも良い舞台がある
もちろん、勝ったのは須貝尚介厩舎の5歳牡馬ゴールドシップにきまっている。でも、抜け出して差を広げた瞬間、このGIを勝ったのは「ノリ(横山典弘騎手)にちがいない!」。同時に、「ステイゴールドだからだ!」と感嘆してしまった。夏のグランプリは、1番人気に支持されたゴールドシップ(父ステイゴールド)の圧勝だった。横山典弘騎手(46)が、3週も連続してゴールドシップと理解し合い、打ち解け合うために栗東に行ったことは伝えられている。ただ調教にまたがるだけでなく、馬房に入ってあいさつをかわし、調教が終われば顔をなで、もう親しい友だちであることを認め合っていたことも…。
ありえないくらい異例である。パドックでまたがり、返し馬に入り、わずかの時間で個性や気性を把握する。むずかしい馬のテン乗りでも、お手馬のような手綱さばきで能力を発揮させてしまうのがベテラン横山典弘騎手のトップジョッキーたるゆえんである。たまに疎通が図れないと、後方追走から「直線差詰め」だけになったりすることもあるが、それはワンアンドオンリーのように、やがてしかるべき結果を出すための過程である。3週も連続して栗東に行った。行かなければ、ゴールドシップの全能力発揮のパートナーになれないと感じたからである。
ゴールドシップは気負うことなくソロっとスタートを切った。これでは行き脚がつかず最後方追走となるかと見えたが、他馬と離すように外を進ませ、小さな合図を送ると、ゴールドシップはまるで打ち合わせていたかのように二の足を利かせて1コーナーまでに好位の外におさまった。
このレース運びは、後方一気をきらった陣営が、内田博幸騎手→ムーア騎手→岩田康誠騎手→ウィリアムズ騎手…と、毎回、毎回、騎手をチェンジしながら注文をつけたレース運びである。
聡明なゴールドシップは、こういうレース運びをした方がなにかと厄介な問題を引き起こさず、自分にも楽なレースになるのをもう理解していたのである。友人になった典弘騎手に「めんどうをかけてはならない」。レース後の「気まずさを味あわせてはならない」。ゴールドシップが自分から行ったように見えた。この時点でもう勝機はみえた。
ヴィルシーナが主導することになったレースの流れは・・・柏木集保
1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。