2003年12月08日(月) 10:27
12月1日から4日まで英国のニューマーケットで行われたタタソールズ・ディセンバーセールのメアセッションは、総売り上げが前年比13.7%アップの3,873万ギニー、平均価格が前年比7.6%アップの48,472ギニー、中間価格が前年比15.6%アップの18,500ギニーと、全ての指標が前年を上回り、しかもディセンバーセールの歴代最高をマークするという盛況に終わった。
市場の中身としては、前週の1歳、当歳セッションと共通したものがあった。高い方のマーケットは、期待したほどはヒートアップせず、しかし中間以下の価格帯では非常に高い需要があり、足腰のしっかりしたマーケットとなった。生産者や主催者にとっては、充分に納得のいく結果ではなかったかと思う。
最高価格は、2日目に登場した99年の英国オークス馬ラムルーマ。故ファハド・サルマン殿下のディスパーザルの目玉と言われた馬である。マキャヴェリアンを受胎中(来春に生まれれば彼女にとっては2番子にあたる)の彼女は、210万ギニー(約4億5000万円)でクールモアスタッドの総帥ジョン・マグナー氏が購買した。
日本人は、8頭を平均53,125ギニーで購買。前年が16頭を平均70,687ギニーで購買したから、購買規模としては半分以下に落ち込んだことになる。マーケットが高いと太刀打ちが出来ないという、一般景気を反映した近年の傾向がそのまま出た結果になったが、ことこのセールに限って言うと、日程的な問題が大きく作用したようだ。御承知のごとく、今年から有馬記念が12月の最終日曜日となったため、レースのスケジュールが例年より1週間後ろへずれ込む形となっている。この日程だと、ディセンバーセールのど真ん中にジャパンCが来て、JC翌日がメアセッション初日となってしまうのだ。ディセンバーの主力購買者となるべき大手牧場の皆さんは、ほとんどが何らかの形でJC出走馬に関係しており、JC当日に東京競馬場に居ようとすると、どうしてもメアセッションの初日を欠席しなくてはならないのだ。これでは、セール参加を取り止めようという事になるのも致し方ない。
余談になるが、今年のJCは近年でも最高とも言える豪華な顔触れの外国馬が揃ったにも関わらず、海外からのプレスの顔触れがいささか寂しかった。例えば英国の場合は、障害の重要な1戦であるヘネシーGCと日程が重なってしまったのだ。毎年のように来てくれていた名物記者のジョン・マクリリック氏なども、地元のヘネシーGCを優先し、JC観戦を断念せざるを得なくなってしまった。
北米でも、東海岸でマイルのG1シガーマイル、西海岸で牝馬のG1メイトリアークSと3歳の芝のG1ハリウッドダービーが行われる週末とぶつかってしまっている。記者だけでなく騎手たちも、どちらへ行くべきか悩んだ人が多かったはずだ。
競馬の世界はワールドワイドなイベントが多く、すべての主催者にとって満足の行くよう日程を調整するのはほぼ不可能と言っても良いが、JCの日程だけは、再考の余地を残していると思う。
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合田直弘
1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。