週刊サラブレッド・レーシング・ポスト

2003年12月22日(月) 14:30

 軸馬不在の大混戦模様だったアメリカ2歳牡馬戦線に、ようやく主役の座を務められそうな大物が出現した。20日にハリウッドパークで行われたG1ハリウッドフューチュリティを、デビューから無傷の3連勝で制したライオンハートである。

 ここまでの北米2歳戦線といえば、牝馬路線にハーフブライドルドという女王がいるのに対して、まさしく群雄割拠。御承知のごとく、主要3地区(東海岸、中部地区、西海岸)の最終プレップレースの勝馬がこぞってBCジュヴェナイルを回避。そのBCジュヴェナイルで押し出されるように本命に推されたクヴェーが最下位に惨敗し、勝ったのは前走メイドンを勝ったばかりだったアクションディスデイ。更にBC回避組の中でも、西海岸のノーフォークSを14馬身差勝ちして最高の大物と目されたルーラーズコートに故障発生(休養先のドバイで膝を骨折)と、トップ集団の勢力分布が全く固まらずに2歳の年末まで来ていたのである。

 そこに登場したライオンハートとは、2003年2月にフロリダで開かれた「ファシグティプトン・コールダーセール」で、最高価格の140万ドルで購買されていた馬であった。1回目の公開調教で1F=10秒フラットの猛時計をマーク。いかにもスピードのありそうな体型で、トモにもみっしりと筋肉が付いた馬体は、購買者たちの羨望の眼差しを集め、活発なビッドの応酬の末にマイケル・テイバー氏の代理人のデミ・オバーン氏が落札した。

 ライオンハートは、BC前日(10月24日)のサンタアニタで6Fのメイドンを制してデビュー勝ち。続いて11月15日にハリウッドパークで行われた7FのG3ハリウッドプレビューSを6馬身差で連勝。この時獲得した103というベイヤー指数は相当優秀なもので、ハリウッドフューチュリティでは単勝1.5倍という圧倒的支持を受けていた。

 騎乗したM.スミスはレース後「これまで騎乗した最強馬の1頭」と絶賛。スミスと言えば、前年の2歳王者ヴィンディケーションの手綱も握ってた男だけに、このコメントを額面通りに受け取れば、相当の手応えを感じていると見て良さそうだ。

 この馬の今後の課題は、距離の克服にあろう。父テイルオヴザキャットは、7FのG2(現在はG1)キングスビショップSの勝馬で、母の父ミスターリーダーは1マイルのG2ジェロームHの勝馬。血統的にはマイルがベストの馬だけに、Run For Rosesと呼ばれるケンタッキーダービー戦線の距離が9Fに突入する4月頃が、この馬にとっての胸突き八丁になりそうだ。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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