2014年09月03日(水) 18:00 23
3日目最高価格馬の862番落札場面
4日間を通じての集計は、1133頭(牡606頭、牝527頭)が上場され、695頭(牡423頭、牝272頭)が落札された。牡馬で約70%、牝馬は51.61%、牡牝を合わせると61.34%の売却率となる。これは前年比6.65%の上昇となり、7月に開催されたセレクションセールの62.1%に匹敵する高い数字である。昨年よりも上場頭数は3頭増とほとんど変わらなかったものの、落札頭数が77頭もの大幅増となったことから、売却率を大きく押し上げる結果になった。
売り上げ総額は30億8620万8千円(税込)。前年比5億5308万3000円の増加で、平均価格は444万587円(牡508万1030円、牝344万4604円、いずれも税込)。こちらも前年比34万4679円の増となった。
消費税を差し引いた本体価格での比較では、昨年の24億1250万円に対し、今年度は28億5760万円。4億4510万円の増となり、平均価格は411万1655円となる。前年比20万7934円の増加で、一昨年以来2年ぶりの400万超えとなった。
とにかく、数だけは次から次へとよく売れた印象が強い。例年ならば、セリの最終日ともなれば、売れ行きが落ち、ムードも低調になってしまうのだが、今年に限ってはそんなことはなく、最後まで失速しなかった。朝8時からの比較展示、正午からのセリという日程で、300頭前後が上場されていた3日目までは、午後6時まで休むことなく延々10時間に及ぶ長丁場のスケジュールであったにもかかわらず、間延びすることなく終了した印象だ。
この活発な取引を支えていたのは、前年よりも購買登録者の大幅な増加によるところが大きい。2013年には591人だったが、今年は676人にまで増え、新規の登録者も目に付いた。セリに自ら参加し、自分の目で馬を選び、セリ落とすという流れになってきているのだろう。まだ不十分なところが多いとも言われるが、市場全体では、購買者を迎え1日を過ごして頂くためのさまざまなサービスを充実させてきた結果、徐々に「セリを楽しむ」層が増えてきているのは間違いなさそうだ。
会場内にいると、ほとんどの購買者が出たり入ったりを繰り返しており、目当ての馬の上場が近付くと会場入りし、着席してセリに参加する。落札できた場合もそうでない場合も、当該馬のセリが終わるとまた会場から出て行き、場内のどこかでゆっくりと休憩するというような動線になっている。セリの間、ずっと固定席に腰かけて過ごすのはかなりの難業であり、それを補うために、以前とは比較にならないくらいの「腰をおろして休憩できる場所」が各所に設置されている。また有力バイヤーには個室も用意されており、長丁場を乗り切るための工夫が随所に見られるようになっている。
食事に関しても近年は少しずつ充実してきており、さまざまなニーズに対応できるような態勢ができつつある。セリというと半分冷えたようなお弁当を配って終わり、という時代が長く続いたが、ここで購買者に終日気持ちよく過ごして頂くための創意工夫が徐々に実を結んできたともいえるだろう。
ただ、上場する側にとっては、相変わらず価格の伸び悩む馬が少なくない印象で、確かに平均価格の上昇は喜ばしいことだが、まだオータムセールも控えているこの時期に早くも「投げ売り」してしまうケースが目に付いた。
取引数の割に全体的にはやや淡泊な印象が残るのは、激しくせり合う場面がそれほど多くなかったことによる。100万円、150万円という価格帯の落札馬も少なくなかったし、中には50万円を切るような落札馬も登場した。
すべての上場馬が生産コストを上回る価格で取引されることが理想だが、それは望めないだろうし、だとすれば、今後はいかに個々の価格を上げて行くかが大きな課題となってくるだろう。
なお、3日目の最高価格馬は862番「メモリーズオブロニー2013」(父ブラックタイド、母メモリーズオブロニー、母の父Storm Cat、牡青鹿毛)の1728万円(税込)。浦河・(有)駿河牧場生産で飼養管理者は(有)チェスナットファーム。落札者は竹園正継氏。
「メモリーズオブロニー2013」の立ち姿
また4日目の最高価格馬は1236番「オートサンデーの2013」(父キングカメハメハ、母オートサンデー、母の父サンデーサイレンス、牡鹿毛)の2052万円(税込)。新ひだか町・高橋修牧場生産で飼養管理者は(有)福山育成牧場。落札者は田畑利彦氏。
「オートサンデーの2013」の落札場面
「オートサンデーの2013」の立ち姿
4日間を通じての最高価格馬は先週の本コラムで紹介した2日目に登場の399番「セーフアズロックの2013」(父ハーツクライ、母セーフアズロック、母の父ロックオブジブラルタル、牡栗毛)の2862万円(税込)。日高町・山際辰夫牧場生産、飼養管理者はオークツリーファーム、落札は山岡良一氏であった。
セリ終了後、日高軽種馬農協の木村貢組合長は「運営面においてはまだ改善すべきところが多いのですが、数字に関しては95点をつけられると思います」と安堵の表情で振り返った。次回は10月初旬にオータムセールが予定されている。
田中哲実
岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。