ハービンジャーの広がる可能性/札幌2歳S

2014年09月05日(金) 18:00


新潟2歳Sより全体レベルは確実に高い組み合わせ

 注目の1頭だったジャズファンクが除外され、未勝利勝ちのロジチャリスも出走かなわずとなったが、函館、札幌デビュー組に、東京、福島、新潟組も加わった好カード。

 注目馬は多いが、新種牡馬ランキング首位に躍り出たハービンジャー(父ダンシリ)には大きな興味を持っていい。父系は、父ダンシリ、その父デインヒルが示すように明らかな欧州血脈。その父方には日本でも良く知られるイルドブルボン(父ニジンスキー)、ハイハット、ヒズマジェステイなどが並び、それだけでも底力こそが身上のヨーロッパタイプを思わせる。さらに、母方には、シーバード、セントパディ、クレペロ…など、古典にも近い重厚な種牡馬が並んでいる。

 ハービンジャーは馬場の改装されたアスコットのキングジョージをレコードで独走したといっても、近年の日本ではまず大成功とはならないタイプの危険があった。ところが、サンデーサイレンスの血を持つ牝馬を味方に(もうニックスに近いかもしれない)、洋芝の函館、札幌、長い直線で底力が求められる新潟で、一気に勝ち馬を続出させはじめた。

 勝ち馬が多く生まれるのはもっと先のことかもしれないという心配をよそに、もう成功がみえたのである。これからの路線、来期のクラシックにはおそらく多くの有力馬を送り込んでくる可能性が高い。まず、予測通り洋芝や、新潟コースは合うことが分かった。

 ただ、玉石混交の新馬や未勝利戦のことだから、助走の前半スローから、勝負どころからペースアップすれば勝てた。欧州型の特徴を伝えるだろうハービンジャーに理想のレースが組まれた7月-8月以降に勝ち馬が続出は、当然のことでもある。主要レースは函館や札幌ではない。

 これからのコースや多頭数競馬、緩急のペース変化、もまれる展開、勝負どころで求められる鋭い切れがなくては、いかに大物の資質を秘めていても、日本のビッグレースでは思うようにいかないかもしれないのである。

 スワーヴジョージ(母父サンデーサイレンス。牝系はちょっと詰めの甘いきらいはあるが、多くの馬が路線に乗ることの多いトゥザヴィクトリーの一族)は、ハービンジャーの広がる可能性、ビッグレースでの活躍を推し量るうえで、格好の重賞挑戦馬である。

 たまたまではあるが、おそらく今回もダッシュは良くないスワーヴジョージは、もまれること必至の内の5番を引いてしまった。新馬戦では馬群のインで4コーナーまで我慢し、そこからスムーズに抜け出した同馬だが、今回はどんなレースになるのだろう。期待しつつ、心配しながらスワーヴジョージのレースを注目したい。この馬だけでなく、どうやら似たタイプが多そうなハービンジャーに処する形が見えてきそうな気がするからである。

 この相手で、厳しいもまれる道中を克服して快走したら、この馬はもう、文句なしのクラシック候補に躍り出すことになる。今年は、おそらく新潟2歳Sより全体レベルは確実に高い組み合わせである。このあとが楽しみになる結果を期待したい。

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柏木集保

1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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