2004年01月05日(月) 18:05
netkeibaを通じて競馬をお楽しみの皆様、遅ればせながら明けましておめでとうございます。本年も、日本国外の競馬や生産にまつわる興味深い話題をタイムリーにお届けすべく頑張る所存ですので,御愛読のほどよろしくお願い申し上げます。
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競馬がワールドワイドなスポーツであることを示す象徴的なイベントの1つが、99年に鳴り物入りでスタートした『ワールド・シリーズ・レーシング・チャンピオンシップ(WSRC)』である。世界の主要競馬開催国で行われているそれぞれの国のチャンピオンシップ戦をシリーズ化。ポイントシステムを設けて、最多得点獲得馬を「サラブレッド世界チャンピオン」に認定しようという試みは、その企画の斬新さとスケールの大きさが受けて、創設当初から世界の競馬ファンの認知と支持を得るにいたった。
ところが、このシリーズが曲がり角を迎えたのが02年だった。99年から冠スポンサーとしてシリーズをサポートしてきたエミレイツ航空が、航空業界全体の業績悪化を理由に、3年契約の終了をもって後援企業から撤退。後釜となる企業が見つからなかったシリーズは、02年からスポンサー抜きで、参加する競馬開催国からの協賛金のみによって運営されることになった。そして03年、明確な理由の説明がないままにドバイWCがシリーズから脱退。更にSARS騒動の影響によって、シンガポールのインターナショナルCが開催中止に追い込まれるという痛手を被った。03年半ばから、自動車ブランドのロールスロイスが部分的スポンサーとして参画するようになったものの、創設6年目を迎える04年、『WSRC』が、存続そのものを含めた大きな岐路に立っていることは多くの関係者が認めるところとなっている。
そんな2004年初頭、『WSRC』を巡る2つのニュースが世界を駆け巡った。ニュースの1つは、それが事実なら"吉報"であり、もう1つは"凶報"であった。
まずは、良い方のニュースから。04年のシリーズをいかにして運営するか、参加国関係者が一同に会して討議する総合ミーティングが1月29日にニューヨークで開かれるのだが、どうやらその場で、新たな冠スポンサーの発表がありそうとのニュースが伝わってきた。具体的な企業名までは伝わって来ておらず、また、どの程度の資金的投入があるのかも定かではないが、シリーズ全体を支援してくれる企業が出現してくれるのだとしたら、うれしい話だ。
一方、事実だとすれば残念なのが、「凱旋門賞、シリーズ脱退」の噂である。現段階で関係者は明言を避けているが、前出の新たな冠スポンサーに絡んだ問題で、そういう動きがある事は確かな様だ。例えば、ロンシャンの凱旋門賞ウィークが独自に獲得を目指している(或いは、既に獲得している)協賛スポンサーと、シリーズ全体を新たにスポンサードする企業が同業他社で競合関係にある場合、2社が並び立つことは不可能だ。この場合、凱旋門賞のシリーズ脱退は不可避となろう。
いずれにしても、1月29日の総合ミーティングをおおいなる関心とともに待ちたいと思う。
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合田直弘
1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。