2014年09月15日(月) 12:00 28
▲カナダで日本人第一号のジョッキーとなった安藤さん
赤見 イギリスで充実した生活を送られていて、そこからどうやってカナダでジョッキーになられたのか想像できないですが(笑)。どんな展開になっていくんですか?
安藤 ジョン・ゴスデン調教師が厩舎を離れることになったんです。「ハッピー、俺についてこいよ」って言ってくれて、僕も「うん」って。ひとまず勉強のためにアメリカかドバイに行くという話になったんですけど、ジョンが「ドバイはダメだ。ドバイに行ったら、お前は死ぬぞ」って。
赤見 え??
安藤 「女の子を見て触ったりしたら手を切られちゃうって聞くし、歩きながらビールを飲んだら死刑になるかもしれないんだ。ドバイはいいところだけど、ルールがわかっていなくて、英語もそこまで話せないお前を送ることは、俺としてはできない。だから、アメリカに行こう」って。
ただ、アメリカはビザがおりないんですよ。「それならカナダにしよう。アメリカに近いし、競馬も同じだから」って。競馬のレベルとしてはそこまで高くはないけど、過去にニジンスキーやノーザンダンサーを生産した背景もあるから、すごく興味はありました。
それで、イギリスのシーズンが終わった後に行くんですけど、1月に行ったら馬が1頭もいない…。それはそうですよね。気温がマイナス25度とかですから。その間、馬はアメリカに行っているんです。それで、僕もアメリカのフロリダまで行くことにしたんです。カナダに着いた次の日に安い車を買って、それで行こうって。まぁ、距離は3600キロあったんですけど…。
赤見 何日ぐらいかかったんですか?
安藤 1日です! 23、24時間くらいだったかな? 高速が直線にずっと続いているので、120とか130キロで走り続けて。そこで出会うのが、僕の師匠になるフィリップ・イングランドです。アフリートの調教師なんですけど、その人に出会って、カナダに戻ってから厩舎でお世話になることになったんです。
厩舎のみんなもすごくいい人で、「人種差別が全くない、こんな国があるんだ!」って感動しました。あと、向こうは馬医療がすごく進んでいます。それはイギリスでジョンにも言われていたんです。「イギリスのバンデージの巻き方は忘れろ。向こうはキツさも早さも全てがプロフェッショナルだから」って。イギリスの人たちは「アメリカの調教内容はまだまだ」って言うんですけど、馬医療に関してはアメリカが群を抜いてすごいというのは、ヨーロッパ全体が認めています。
▲安藤「アメリカの医療技術は、僕も群を抜いていると思います」
赤見 イギリスとはまた違うところで、勉強になることがあったんですね。
安藤 そうです。それで、厩舎にフィリップの右腕となって働いていた人がいたんですね。僕にとって・・・
東奈緒美・赤見千尋
東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。
赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。