2015年02月18日(水) 12:00 13
英国における秋の2歳重賞競走はまず、2011年のブリティッシュ・チャンピオンズ・デイ創設を機に、開催競馬場や開催日に大きな変更があった。
2010年以前の開催場と開催日を大雑把に記せば、9月最終週にアスコットで開催されていたのが、牝馬のG1フィリーズマイル(芝8F)と牡馬のG2ロイヤルロッジS(芝8F)だった。その翌週にニューマーケットで行われるケンブリッジシェア開催で施行されていたのが、牡馬のG1ミドルパークS(芝6F)、牝馬のG1チーヴァリーパークS(芝6F)、牡馬のG3サマーヴィルS(芝7F)、牝馬のG3オーソーシャープS(芝7F)。10月2週目の週末にアスコットで施行されていたのが、G3コーンウォーリスS(芝5F)、G3オータムS(芝8F)。そして、10月第3週の週末にニューマーケットで施行されていたのが、G1デューハーストS(芝7F)、牝馬のG2ロックフェルS(芝7F)というのが、基本的パターンであった。
だが、2011年にアスコットを舞台としてブリティッシュ・チャンピオンズ・デイが創設されると、アスコット競馬場とニューマーケット競馬場の間で、複数の重賞競走のトレードが行なわれたのだ。
具体的には、欧州10F路線の1年の総決算であるG1チャンピオンS(芝10F)、牝馬のG2プライドS(芝12F=現在のブリテイッシュ・チャンピオンズ・フィリーズ&メアズ)、長距離重賞のG3ジョッキークラブC(芝16F=現在のブリティッシュ・チャンピオンズ・ロングディスタンスC)といった、3歳以上の主要競走がニューマーケットからアスコットに移動。その代替として、G1フィリーズマイル、G2ロイヤルロッジS、G3オータムSという、3つの2歳重賞がアスコットからニューマーケットへ移ったのだ。
その上でニューマーケットは、G1デューハーストS、G1ミドルパークS、G2ロックフェルS、G3オータムSを、アスコットのブリティッシュ・チャンピオンズ・デイの1週間前となる10月2週目の週末に集結させ、この日を「フューチャー・チャンピオンズ・デイ」と銘打った2歳馬のビッグイベントに仕立て上げたのだ。更に、9月最後の週末に、G1チーヴァリーパークS、G1フィリーズマイル、G2ロイヤルロッジS、G3サマーヴィルS、G3オーソーシャープSを集め、ここもまたニューマーケットを舞台に2歳戦で盛り上がろうという日程を組んだのだった。
2011年から3年間は、ほぼこのパターンで開催された後、2歳重賞日程に再び変革があったのが2014年だった。
ニューマーケットは、フューチャー・チャンピオンズ・デイの日程を、ブリティッシュ・チャンピオンズ・デイの1週前から、ブリティッシュ・チャンピオンズ・デイを翌日に控えた10月3週目の金曜日に移設。更にそのカードにも手を加え、従来のG1デューハーストSとG1ミドルパークSに、9月最終週から移設してきた牝馬G1フィリーズマイル、この年にアスコットから移設してきたG3コーンウォーリスSの4重賞を、フューチャー・チャンピオンズ・デイのカードとしたのである。また、前年まではデューハーストSのみをスポンサードしていたドバイが、この年からフューチャー・チャンピオンズ・デイ全体の後援企業となっている。一方、フュ-チャー・チャンピオンズデイから外れたG2ロックフェルSは9月最終週に、G3オータムSは10月第2週に施行された。
これが、わずか1年でまたも修正されることになったのだ。
理由の1つは、14年の金曜日開催が、メディアやファンから、翌日のブリティッシュ・チャンピオンズ・デイのアンダーカードのような受け止められ方をし、興行的に成功したとは言い難かった点にある。
そしてもう1つの理由が、2011年の大改革の時から言われ続けていた、距離6FのミドルパークSと距離7FのデューハーストSを同日開催することへの是非だった。欧州には6Fと7Fは別物という意識がある一方で、かつて2つのレースの間に日本式でいうところの中1週あった時代には、82年に両レースを連覇したダイイシスなど、ミドルパークSからデューハーストSというローテーションをとる馬も居たのである。競馬の番組としては、両方使える日程の方が面白いのではないか、という声が、2011年以降、関係者の間から間断なく出ていたのだった。
そんな中からニューマーケット競馬場が導き出した答えが、12日に発表された2015年の日程だった。
まず、フューチャー・チャンピオンズ・デイを10月の第2週に戻し、なおかつ、9日(金曜日)、10日(土曜日)の2日間開催として、名称を「ドバイ・フューチャー・チャンピオンズ・フェスティヴァル」とすることになった。
そしてカードは、9日(金曜日)がG1フィリーズマイル、G3コーンウォーリスS、G3オーソーシャープS。10日(土曜日)がG1デューハーストS、G3オータムSとなった。G1ミドルパークSは、旧来の施行日である9月末のケンブリッジシェア開催に戻ることになったのである。
今年の改革もう1つの目玉が、賞金の大幅アップだ。
デューハーストSが、前年の総賞金40万ポンドから、今年は50万ポンドに。フィリーズマイルが前年の総賞金20万ポンドから50万ポンドにジャンプアップ。両競走ともに、欧州の2歳戦としては最高賞金をかけて争われることになった。そして、フューチャー・チャンピオンズ・フェスティヴァル2日間トータルの総賞金は200万ポンドと、スポンサーのドバイのおかげで欧州の水準としては極めてリッチなイベントとなったのである。
更に、9日(金曜日)には「ニューマーケット・オータム・レディース・デイ」というサブタイトルがつけられ、場内では様々なファッション系イベントが行なわれる予定だ。そして、2日間を通じて学生は入場無料となることも決まっている。
10月の9日(金曜日)・10日(土曜日)といえば、ニューマーケットを舞台とした欧州最高の1歳馬市場「タタソールズ・オクトーバーセール」の、ブック1とブック2の間となる。すなわちブック1の購買者にとっても、ブック2の購買者にとっても、渡航予定のわずかな変更でフューチャー・チャンピオンズ・フェスティヴァルの観戦がかなうわけで、国内外の競馬関係者にとってもこの日程は好都合である。
新装されるフューチャー・チャンピオンズ・フェスティヴァル観戦を、筆者自身も楽しみにしている。
合田直弘
1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。