力を尽くすこと

2015年03月19日(木) 12:00


クラシックまでひと月を切って

 力及ばずということは多々あるにせよ、及ばずながらも力をつくしたいという気持、これは何ものにもかえられない。そこには、互いにいたわる思いがあり、それが慰めや喜びになっていく。とても金銭にはかえられない。根かぎりに努力することを金銭を前提に考えるなら、本当の喜びを味わえない人間になってしまう。事の成否も大切だが、それを越えて大事なことがあり、力をつくすという心こそが価値あるものだと言いたい。どうだろうか、根かぎりに努力したとき、そういう自分をいたわり、ほめてやりたいと思うこともあるのではないか。力をつくす、これこそ気持をやわらげ、満足を得る原動力になっている。

 クラシックレースの第一弾、桜花賞までひと月を切った。トライアルを終え、残る期間最後の調整に入る。きさらぎ賞で牡馬を相手に勝って3戦全勝のルージュバックは、51年ぶりの快挙にウオッカの再来と呼ばれているが、ソエもあって取った3か月の休養を有効にすごすことができた。とにかく、力をつくして申し分ない状況にある。一方、フィリーズレビューを豪快に決めて、これも3戦全勝のクイーンズリング。後方で脚をため大外から一気に追い込んで奥のありそうな勝ち方をみせた。先を見据えたミルコ・デムーロ騎手の根かぎりの努力がうかがえた。この両馬ともカイ食いの心配がなく、思いどおり力をつくせるという共通点がある。おそらく、やわらいだ気分で本番を迎えられそうだ。

 牝馬と言えば、昨年のオークスで3着と健闘したバウンスシャッセが、その後の低迷を脱して中山牝馬Sを勝利した。昨年の今頃はフラワーCを勝っていたが、中山は合うのかもしれない。京成杯を上回る時計で条件特別を勝ったこともあり、牝馬ながら皐月賞に出ていた。3か月の休養を取り、走りのリズムを重視した調整を積んでいたが、力をつくした成果が出たと言いたい。人事をつくして天命を待つ3歳馬。その戦いから一年を経過してステップアップをめざす4歳馬、様々な努力がそこにはある。そしてスプリングS、かつて血統の限界をハードトレーニングで乗り越えた名馬ミホノブルボンを思い出す。

◎ミホノブルボンが他馬を圧倒したスプリングS動画はコチラ

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長岡一也

ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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