競馬にまつわる社会現象

2004年03月24日(水) 12:49

 その日、黒船賞で、中央のG1馬ウインクリューガーが初めてダートの交流重賞に出走することを、どれほどの人が知っていたでしょう。

 ラジオのレース実況が2局あったので、その速報ぐらいはあるだろうと聴いていたのですが、伝えられたのはハルウララだけでした。せめて、武豊騎手がどうしてハルウララに騎乗できたのかに触れてくれれば、直前の黒船賞のことに話が及んで、その結果をしゃべっても不自然ではなかったのにと、ちょっと残念にも思ったのでしたが、わざわざ高知に行って取材するのも、ハルウララのためだったのですから仕方なかったのでしょう。久しぶりに、競馬にまつわる社会現象を見ることができました。

 今までは、ハイセイコーにしろ、オグリキャップにしろ、地方競馬で活躍して中央入りした馬が大きなブームを生むというケースだったのに、今回は、負け続ける地方馬に話題が集中するという一風変った現象でした。

 少なくとも競馬は、勝たなければ生き残れないものです。それが、負けることを認めてしかも応援するというもので、これでは戸惑いを覚えても仕方がありません。

 少なくとも諸外国では、このようなことは考えられないでしょう。日本人独特の感情なんでしょうか。判官びいき、正にこれであり、一般生活の中で、大多数のものが、このハルウララと同じ思いを抱いているということにもなります。

 武豊騎手が語ったように、少なくともこれだけの人を集めるのですから、その意味では名馬と言っていいでしょうという言葉が、とても印象的でした。また、機会があったらまた乗ってみたいという心情にも、共感を覚えたことでしょう。高知競馬の救世主になるかどうかはむずかしいかもしれませんが、競馬には、こういう側面があることを知っただけでも、うれしい出来事でした。

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長岡一也

ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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