2015年04月09日(木) 12:00
ルメール騎手のラキシスが先頭に立とうとするキズナを内から抜いていく様に、ああ無常と為すすべがないことを悟った大阪杯。ダービーで満開に咲いたキズナが、再びあの春を満喫させてくれるのはいつか。ゴールの瞬間、思わず合掌していた、心の中で。ただ、競馬の花の季節は、そこここにある。勝ち負けは宇宙の定めに従ったとしても、次なる挑戦の場では、一変した戦いが可能なのだから、この敗戦を引き摺ることはない。早いリベンジができるのが競馬で、抱いた思いは次にぶつけることになるのだ。一方、勝者となったラキシスには、エアグルーヴ、ダイワスカーレットといった、ここを勝った名牝を目標にさらなる飛躍をという道が見えてきた。満開になるのはこれからなのである。
こうした華やいだ話題の陰にあるものに心奪われることもある。モーリスの圧倒的強さが目を引いたダービー卿CT出走馬16頭の中に、ひたすら自分の競馬をと戦いに挑んだ人馬がいた。デビュー5年目の森一馬騎手とラインスピリットだ。このコンビは4回目、今年に入ってから3戦連続になる。松永昌博調教師は、乗せないことには上手にはならないと、この若手の成長を見守っている。千二百米で4勝しているラインスピリットだが、マイルの方がハナに立ちやすいと森騎手の逃げに任せた。GI競走に使うことになっても彼を乗せると、馬主ともども応援していると知ってレースを見ていたが、直線まで懸命に逃げ、中山の坂の上りで一杯になって交わされていく人馬に、人の情という花が風にまかせて散っていく無常を覚えたのだった。「散るさくら、残るさくらも、散るさくら」ではあっても、花が一度でも咲いたのだから、それで良しとすべきではないかとも思えるのだ。
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長岡一也
ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。
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