前向きな話を

2015年04月23日(木) 12:00


ドゥラメンテとアップトゥデイトの勝利に

 いつもいやなことばかり聞いていては、心は晴れない。逆に、やさしく思いやりのある言葉を耳にしていれば、この心は青空のように澄んで明るくなる。お前はダメな人間だと怒鳴られていると、いつの間にかそうなってしまうし、心がいつもいらいらしている人と接していると、こちらの心もいらいらしてくる。人間は他の影響を受けやすくできているのだ。同じ影響を受けるなら、なるべく前向きな話を聞きたいし、そうなるように自分を仕向けることも大切だろう。要するに、広く大きく豊かな心をどう保つか、浮薄な自己中心の考えを排除するように努めようということになる。

 皐月賞を勝ったドゥラメンテ、短い直線を一気に駆け抜けた鬼脚はすばらしかった。ただ4コーナーで外に持ち出そうとしたとき、大きく外に斜行してしまった。いっぺんに大外まで飛んで気性の激しさを露呈したのだが、騎乗したミルコ・デムーロ騎手は「テンションが高いので難しい馬だが、そういう馬は大好き。次もがんばります」と前向きな気持を表わしていた。騎乗停止の処分は受けたが、そこに暗さは感じられなかった。この前向きな話を聞いたものは、大きな斜行に心を奪われることはなく、ドゥラメンテとデムーロ騎手コンビのとりこになっていたように見えた。愚痴のいい合いは自分を貶めるだけだから、あくまでも前向きに自分を持って行き、次に夢をひろげていくことだと実感できた皐月賞だったとしておきたい。次はそうはいかないぞでもいいし、世代最強の切れ味はさらに磨きがかかるぞでもいい。どう前向きに持っていくかだ。

 中山グランドジャンプは、強豪相手に4番人気アップトゥデイトが重賞初制覇でJG1馬になった。直線、置き去りにされていく上位人気馬の大敗を嘆くよりも、レコードを0秒4更新した勝ち馬と、30年目で大輪の花を咲かせたベテラン林満明騎手に万雷の祝福の拍手を送る方が、次なる好運を運んでくれるように思える。競馬も、前向きな話を聞き、気分を前向きに持っていくのがいい。

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長岡一也

ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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