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元乗馬選手のコラム 〜ウマと人の歴史3 〜
アラシ
2014年06月14日(土) 02:49
8
3連闘失礼します。
それから程なくして、我々エクウスは新たな天敵と出会う事になる。
ヒト属―。やがて共に歴史を紡いでいく友となるこの属腫も、出会った当初は最大最強の天敵だった。緻密で頭脳的な連携狩猟により、我々エクウスはみるみるその数を減らしていった。ヨーロッパ等、ヒト属の生活圏内に進出した仲間は彼らによってほぼ全滅にまで追い込まれた。ヒト属も住みたがらない、草原地帯にいた同胞だけが生き残った。
かつての生存競争をくり広げたウシ目たちはもっと酷かった。生活圏、というか出身地が重複し、エクウスよりもノロマで肉付きの良いウシ目はヒト属の恰好の獲物となっていった。ウシ目の長所が、ヒト属に狙われる原因になってしまった。皮肉な事だった。
時代がもっと下って1万5千年位前になると、いよいよ危機的な状況だった。彼らは弓を使いだし、我々が全速力で逃げようにも、この飛び道具を使って射かけてきた。この様子は、ヒト属のクロマニヨン人が描いたラスコー洞窟の壁画に今でもしっかり残っている。
人類に狩り尽くされ、絶滅に追いやられる種族は既に何種類も出ていた。
ウシ目も、我々エクウスも絶滅を覚悟しなければならない。そんな状況に追い込まれつつあった。それが約1万年前の事だった。
しかし、人類の我々に対する接し方がここにきて急激に変わってきた。以前の様に執拗に追いまわして来なくなり、食糧を自給するために農耕を発明し、一定の地域に定住するようなった。そこから派生して、ウシや、ヤギ、イノシシ等を捕まえ、繁殖させて肉を得るという方法を発明した。「牧畜」である。
どうやら人類の数が増え、獲物の数は減っていった事により、彼らも狩猟採集の生活に行き詰った様だった。ラスコー壁画を描いたクロマニヨン人はそうした食糧事情が影響してか、絶滅していた。今、牧畜を行っているのは「ホモ・サピエンス」つまり、現生人類の人間だ。
ウシ目が次々と家畜化されていく中、我々エクウスは、素早い・肉付きが悪い・神経質・生活圏が違うと言った理由で、当初は家畜に組み入れられる事はなかった。これは近しい親戚にあたるロバも同様だった。この時の牧畜の唯一最大の目的は「肉」なので、当然の考えではある。
こうした事から、我々エクウスはその後4000年間程度、以前ほどではないが引き続き人間に追いまわされる生活を送るハメになった。
つづく
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