週刊サラブレッド・レーシング・ポスト

2004年04月20日(火) 14:32

 4月14日・15日の両日、英国ニューマーケットで開催された欧州最高の2歳トレーニングセール『タタソールズ・ブリーズアップセール』は、総売り上げが前年比47.5%アップの607万ギニー、平均価格が前年比46.3%アップの46,703ギニー、中間価格が前年比24%アップの31,000ギニーという好成績を収めた。バイバック・レートが22,1%と前年(20.3%)よりわずかに上がったものの、北米の市場に比べれば依然として遥かに低水準で、盛況かつ健康という、マーケットとしては申し分のない結果に終わった。

 1989年にスタートしたこのセール。私は90年代半ばから見ているが、年々向上していた上場馬の質が今年は遂にイヤリングセールのセレクトセッションにも引けをとらないレベルにまで上昇。マイケル・テイバー氏やマクトゥーム家といったメジャーな購買者も参加するようになり、いよいよ2歳セールは欧州でも競走馬流通の主流となりつつある事を強く感じた市場となった。

 3月17日付けの当コラムでプレヴューをお届けした時にも書いたが、当セールのスターと言われていたのが、初日登場した上場番号49番の父フサイチペガサスの牡馬だった。母が、2歳の8月に古馬相手にG1ナンソープSを制したチャンピオン牝馬リリックファンタジーという良血馬だが、実馬も力強さと柔らかさが共存した好馬体。更に13日の追い切りでも、飛ぶような勢いでニューマーケットのロウリーマイルを駆け上がって見せ、大きな注目とともにセールスリングに登場した。

 日本のファンにとって幸いなことに、購買したのは日本の関口房朗氏。価格は、2歳市場におけるヨーロピアンレコードとなる50万ギニー(約1億1千万円)だった。関口氏の購買チームは、前日(13日)キーンランドで行われたエイプリルセールで3頭の購買を行った後、夜の便に飛び乗って英国入り。ニューマーケットのせり会場にはセール開始3時間前に到着するという慌ただしさだったが、ひょっとするとこの世代最強のモンスターかもしれないこの馬は、それだけの強行日程を敢行するだけの価値がある逸材であった。

 最高価格馬を含めて、日本人によると見られる購買は13頭。2日目の最高価格馬で、牝馬としては2歳市場のヨーロピアンレコードとなる24万ギニーで購買された父デインヒル・母スパモーヴァの牝馬も、日本にやってくる。大柄で、トモにも質の良さそうな筋肉がみっしりと付いた、牝馬らしからぬしっかりとした好馬体の持ち主。祖母がG1サラマンドル賞勝馬マキシモーヴァで、おば、おじ、いとこにG1勝馬がいるという血統も超一流で、将来の繁殖牝馬としての価値も高い1頭である。

 この他、馬体・動きとも抜群で初日としては3番目の高値となる19万ギニーで購買された母アーティスティックブルーの牡馬、同じく小柄ながら好馬体で血統も一流の母ドーシネアの牡馬、やや引っかかる素振りを見せたものの動きが良く、初日5番目の高値となる12万ギニーで購買された母ワクリアの牡馬、13日の追い切りの動きが抜群に良く、日本への適性も高そうな母フォルリズスルーの牡馬、牝馬にしては骨量のある立派な馬体で、2日目としては3番目の高値となる14万ギニーで購買された母アージェントリエゾンの牝馬、日本で走り重賞4勝を挙げたワシントンカラーの半弟にあたる母ジャンプウィズジョイの牡馬、芝適性も高そうなバランスの良い好馬体で、2日目としては2番目の高値となる19万ギニーで購買された母サブライムビューティの牡馬など、楽しみな馬が多く、POG的にも要チェックの市場となった。

 なお今年の当市場には、シンガポールで開業している高岡秀行調教師も参戦し、2頭の購買を行った。このうちの1頭、父ゴーフォージン・母クイーンズラヴの牡馬は、小柄ながらなかなかの好馬体の持ち主。脚元に少々おっかないところがある馬だが、ぜひ無事に走って、異国で奮戦する高岡厩舎の戦力になってもらいたいと思う。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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