2015年06月15日(月) 12:00
▲「30年分のプレッシャーから解放された」と林騎手、改めて明かすGIの重みとは
未勝利オープンを連勝し、障害馬として頭角を現していったアップトゥデイト。その勢いで一気に年末の中山大障害に挑戦したいところ、陣営はそこをグッとこらえ、慎重かつ着実な道でGIを狙うことにしました。満を持していざ、中山グランドジャンプへ。恩人であるノースヒルズ前田オーナーの言葉を胸に、林騎手は大舞台に立ちます。(取材:赤見千尋)
(つづき)
赤見 大目標の中山グランドジャンプまで、一度中山コースを経験させたり、一歩一歩進めていったという感じですよね。今年3月の阪神スプリングJで初めての重賞に挑戦と。
林 これは、重賞を経験させたいというより距離です。長い距離を上手に走れるか試したかったんです。障害のデビュー戦が2900mだったでしょう。ここで一気に3900mですから。
赤見 1000mも違うんですね。さらに中山グランドジャンプになると、4250mですもんね(中山大障害は4100m)。
林 そうそう。そういう意図があったんですけど、ちょっとへぐってしまって…。大事に乗り過ぎました(1番人気4着)。
赤見 いろいろな経験をして迎えたGIだったんですね。林騎手ご自身は、レースを前に胸にくるものはありましたか?
林 レースの週に、(生産者の)ノースヒルズの前田社長から電話があって、「せっかくのGIなんだから、思い切って悔いのないように乗って来い!」って言ってもらったんです。それを聞いたら「ここまできたんだから、精一杯のことをやろう!」って。
赤見 前田オーナーとは、お付き合いが長いんですか?
林 前田社長が初めて馬を持った頃から、僕の師匠だった吉田三郎先生とお付き合いがあったんですね。それで、僕もその頃からお世話になっています。僕の仲人でもありますしね。
赤見 それは相当深いご縁ですね。そういうご縁を大切にされる方ですよね。
林 すごい方ですよね。アップトゥデイトに関しても、最初に(佐々木晶三)先生が「障害に向きそうだな」って言っていて、それを聞いた前田社長が「障害にするなら満明を乗せてやってくれ」って言ってくれたんです。それで僕が乗れることになったんですよ。
赤見 それは、前田オーナーのためにも勝ちたいですね。レース前は、レッドキングダムとアポロマーベリックの2強というムードがありましたが。
林 うん。2強の他にも、なんちゃん(難波剛健)のサンレイデュークとか、(高田)潤のソンブレロとか、メンバーはそろってましたからね。早い上がりを使う馬もいたので、その馬より先に仕掛けなきゃという意識でした。イメージでは2、3番手。実際も思い通りの位置で走れて、早めに仕掛けることもできました。
赤見 これまでとは違う大障害コース。アップトゥデイトの反応はどうでしたか? 最初は大竹柵ですよね?
林 そうです。最初は大竹柵。いつも慎重にしっかり飛ぶ馬なので、全然問題はなかったですね。難関の大生垣も、行き脚がついて完璧にクリアしてくれました。
赤見 今回は落馬してしまった馬も多かったですけど。ハードなコースですし、レース中盤で疲れて来ると余計に?
林 そうですね。疲れから、序盤ほどきれいに飛べなくなるっていうのはありますね。幸い、この馬の場合はその辺りも全く問題なくて。終盤に入っても手応えが良かったです。
赤見 早めに先頭に立ちましたもんね。最終障害前には先頭に立って、4コーナーでアポロマーベリックを離しにかかって。
林 うん。気持ちの中では、4コーナーをゴール板くらいに思って乗っていました。
赤見 そこからさらにぐんぐん離して行きましたね。
▲赤見「アポロマーベリックを早めにかわして、ぐんぐん離して行きましたね」
林 あそこまで離してるって、気がつかなかったんです(苦笑)。とにかく「早くゴール板きて!!」って。あの短い直線がすごい長く感じました。
赤見 緩めることなく、追ってらっしゃいましたね。
林 いや、もう、ここまできたら絶対に負けたくなかったので。なんとしても勝ちたいと思ってたので、必死だったんです。だから、振り向いた時に「ええーーーーっ!? こんなに!?」って思いました。そんなことも気がつかないなんて、何十年馬に乗ってんだって感じですよね(苦笑)。・・・
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東奈緒美・赤見千尋
東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。 赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。
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