「苦労してでも騎手をあきらめなかった魅力が競馬にある」城戸義政騎手にインタビュー

2015年06月30日(火) 18:00

競馬の職人

城戸義政騎手


城戸義政騎手「デビュー3年目にしてやっと周りが見えてくるようになってきたと思うのでここからが勝負ですね」

 5週連続GIレースのフィナーレを終え今年もいろんなドラマが生まれましたね。

 宝塚記念ではゴールドシップがまさかまさかの出遅れ・・・ゲートまでスムーズに行ったのでよかったと思ったのもつかの間。競馬場内には悲鳴に似たようなどよめきと歓声が渦巻いていましたよ。何が起こるかわからないのが競馬の醍醐味でしょうね。

 ラブリーデイは重賞4勝目にしてGI初制覇、おめでとうございます。

 もう一つ印象に残るのは、M・デムーロ騎手のダービー制覇。ネオユニヴァースで外国人騎手として初めて勝利し、そして今年はJRAの騎手となってドゥラメンテで2勝目となるダービー制覇。騎乗ぶりも見事なんですが、レース回顧のとき日本語できちんと話す口調は見事です。「この馬は素晴らしい!」と僕は、話すミルコが素晴らしい! ドンドン日本語のスキルが上がってきていますよね。

 いよいよ今週からは本格的な夏競馬の始まり! 今年は、JRAプレミアムとして【夏の2歳単勝】が登場しています。6月6日から9月6日までの2歳戦全レースにおいて単勝に売り上げの5%相当が上乗せされるというものです。2歳戦に注目すると夏競馬ならではの楽しみ方を満喫できるかも・・・?

 2歳馬たちもデビューを迎え、もう来年のダービーへの挑戦が始まっていくんですね。初レースに挑む若駒たちが作るドラマにも期待が一杯です。

 今週は、デビュー3年目の城戸義政騎手。来年は減量がなくなるから今年が勝負という意気込みをお聞きしました。

常石 今日はよろしくお願いします。城戸君と話すのは初めてですね。名前が全く分からなくて康太騎手に『藤岡厩舎でよく話してる若い騎手の名前教えて』とお聞きしたんです。

城戸 こちらこそよろしくお願いします。話したことはなかったですが僕は仲田さんと話しているのをよく見かけていたので知っていました。

常石 29期生ということは岩崎騎手と同期なんですね。聞いたところでは1年高校へ行ってから競馬学校へ入学されたんですね。

城戸 そうなんです。2度目の受験で合格したので1年は高校へ通っていました。僕は乗馬未経験だったので、当然のことですが「馬に乗る」という部分で他の合格者より遅れていると思っていました。競馬学校への合格が決まってからは高校へ行っていても馬に乗れないのが気になってしまい勉強に身が入らないので高校を中退して、競馬学校にお願いして4か月前の12月から競馬学校へ行かせてもらいました。それでも同期のみんなが入学してきてからもうまく乗れなかったのでその時期が1番つらかったです。馬に飛び乗るって難しいですよね。なかなかできなくて苦労しました。

常石 そうそう、あれって難しいよな。僕も経験ありますよ。やっと乗ったのに『もう1回』といわれるとガクッとくるよな(苦笑)。でもその苦労があったからデビューしたとき、先生から脚あげてもらって馬の背中に乗ったときは感動したよな(笑)。

城戸 僕もデビューの時、足を支えてもらったことを覚えています。まずは、この感触なんだと思いました。とにかく苦労しましたからデビューはうれしかったです。

 うまく乗るコツって何かあるんですか? それがわからなくてもたもたしていました。乗馬未経験だったからバランスをとるのが難しくてよく落馬していました。4か月前に入学していたんですが同期との実力差が埋まるどころか広がるばっかりで苦労しました。悔しかったですね。他の同期と実力差がある上に足の小指を馬に踏まれてしまい全治10日の診断が出たのですが休んでなんかいられないからパンパンに腫れた足で訓練に参加しました。何をするにも必死でしたね。前向きで頑張りました。

常石 僕も乗馬未経験だったから苦労したこと思い出すわ。初めて外出許可が出てみんなでディズニーランドへ行く日の前日に38度の熱をだし一人寮で寝てたわ。あれって悔しいよな。

城戸 そうだったんですか? 追いつくのに時間かかりましたよね。

常石 今年でデビュー3年目になりますが?

城戸 デビュー3年目にしてやっと周りが見えてくるようになってきたと思うのでここからが勝負ですね。来年は減量がなくなりますから、ある間に減量を生かした乗り方をするようにしています。なくなることはシッカリ乗れってことだと思うので気合を入れていきます。いま頑張らないといけないと思っています。

常石 得意な乗り方はありますか?

城戸 スタートが得意なので出してからも馬の邪魔をしないように乗るように努力しています。自分のスタイルを崩さないように乗っていきたいです。

常石 スタートは大事だからね。すごい魅力ですよ。昨年は、函館で大活躍したから今年も楽しみに期待しています。人気のない馬でも思いっきりのいいスタートをして勝ちに持ってきてるから面白い競馬するなー、と思いました。

城戸 どの馬もレースに出ている以上、勝つチャンスはあると思うのでしっかり乗ろうと思っています。なかなか人気馬に乗る機会も少ないので1頭1頭大事にしていきたいです。

常石 ある記事を見たんですが、城戸騎手の特徴は若手らしからぬ落ち着き払った騎乗ぶりとスタートの巧みさです、と書かれていました。大半のレースでいいスタートを切って、そのあと流れに合わせたスムーズな競馬ができるのはベテランの騎手ですよ。それに好スタートを決めても競りかけてくる馬がいるとつられたり焦ったりしてしまうでしょう。

城戸 好スタートができたときはだいたい冷静に判断でき自分のペースを守って無理せずに、相手の馬に無理させスタミナを消耗させられたらいい競馬になります。

競馬の職人

2015年2月21日京都2Rでキングルアウに騎乗し逃げ切り勝ちを収めた城戸義政騎手

常石 そんな乗り方はベテランしかできない乗り方ですね。スタートがいかに大事かよくわかりますね。馬はじっとしないから難しいですよね。『好スタート』を大事にしてください。そのタイミングを体で覚えこむことがこれからの大きなレースに乗るために大事になってきます。先日(5月31日京都7R・芝1800m)のテーオービックバンでの勝ち方はまさにその通りでしたね。

城戸 新潟からの連闘使いできついレースになるかと思っていましたが、疲れもなく能力の高い馬です。押して押してハナへ行ってからはマイペースでレースを運ぶことが出来、4角で並びかけられた時に仕掛け直線は何度も手前を変えて押し切ることができました。強い馬なので楽しみです。

常石 ほかに期待している馬はいますか?

城戸 新潟で勝った(5月23日新潟3R・ダ1800m)ローマンレジェンドの弟で藤原厩舎のオーサムレジェンドという馬に期待しています。成長する血統を持ち素質十分な走りをしていました。テンから行きっぷりもよかったし直線入り口で先頭に並びかけ2着馬に渋太く抵抗されましたがゴール前でグイっと抜け出し強い競馬をしてくれました。最後はまだまだ余裕がありました。上のクラスでも十分通用すると思います。

常石 秋競馬がたのしみですね。ファンにメッセージをお願いします。

城戸 ここからの競馬が面白くなってきます。夏休みを兼ねて全国の競馬場にも出かけてみてください。そして是非生で観戦してほしいですね。僕が苦労してでも騎手をあきらめなかった魅力が競馬にあることを発見できると思います。

競馬の職人

調教へ向かう城戸義政騎手

常石 長い時間ありがとうございました。城戸騎手の深ーい思いが伝わってきました。取材させていただき感激です。その思いを大切にしてください。

城戸 ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。

***

城戸義政騎手について藤岡佑介騎手にお聞きしました。

藤岡佑 真面目だし一生懸命さがいいよね。藤岡厩舎の戦力です。期待しています。

***

 話していて苦労人だなと感じましたがさわやかな正直者の好青年でした。ホンマにしんどかったし苦労したんです。人気馬に乗ることも少ないけど勝つための工夫はシッカリします。が印象的でした。頑張れ!! 城戸騎手、藤岡兄弟も応援しています。藤岡厩舎の3本の矢となれ!! つねかつこと常石勝義でした。

バックナンバーを見る

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

常石勝義

常石勝義
1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)の『常石勝義のお馬塾』(毎週金曜日17:30〜)に出演中。

関連情報

新着コラム

コラムを探す