過去に囚われすぎてはいけない

2015年07月09日(木) 12:00


人気に応えたアンビシャス

 過去に囚われるなと言われても、どうしてもいやな記憶は消えてはくれないもの。引きずられることなく、教訓として生かせれば貴重な経験と言えるのだが、そんな簡単にはいかない。要は、こうしようという目標が見えているかどうか、それがあるかないかで、日々の生き方がちがってくると言えるぐらいではないか。競馬には、過去のデータがある。レースを考えるとき、そのデータを駆使して道すじをつくって行こうとする。だが、ここでも過去に囚われている姿が見える。世に言うデータ派には耳が痛いかもしれないが、「データは過去のもの」、「データは破られるためにある」とも言われているのだが、それでも頼ろうとするのだ。確かに分かりやすいし、答えも見つけやすいのだが、競馬もそんなに簡単ではない。過去に囚われすぎてはいけないとラジオNIKKEI賞のアンビシャスは、立派に証明してみせた。

 ハンデ戦になった2006年以降、一番人気は未勝利。加えて、トップハンデ馬も勝っていないとなれば、データ派はアンビシャスに疑問を持つ。一番人気でトップハンデなら狙いたくないと分かりやすい結論を出してしまうのだ。もちろんこの判断は、今回は間違っていたのだが、どこが足りなかったのかだ。前走のプリンシパルSを勝ちながらダービーに出なかった陣営の考え方をしっかり受け止めていたかどうか。距離の守備範囲を考慮した目標を、ここから秋へと定め、ラジオNIKKEI賞でしっかりと賞金を加算しておこうという心づもりだったこと。そして、何よりもルメール騎手が、新馬戦を勝って以来ずっと乗りたかった馬と述べていたのが大きい。新馬、前走とルメール騎手で勝っていて、今度でこのコンビは3戦3勝。音無調教師も、巧く瞬発力を引き出してくれると全幅の信頼を寄せている。レース最速の上がりで3馬身半も離しての勝利は大きい。勝ってみれば、一番人気に支持した多くのファンの目は確かであり、目標もしっかり設定できていたものの勝利でもあった。

 大川慶次郎さんがデータ競馬という考え方が台頭してきたときに述べた「データはあくまでも過去のものでしょう」という言葉を久々に思い出した。

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長岡一也

ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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