水清ければ大魚なし

2015年07月16日(木) 12:00


完全復活を印象づけたグランデッツァ

 大きな仕事を成し遂げる人は、小さなことは気にせず、大筋を押さえるようにつとめているものだ。だいいち、小さなことまでとがめていたら人が集まってこない。古くから「水清ければ魚棲まず」と言うが、中国の後漢書には「水清ければ大魚なし」とある。少しぐらいはいいではないか、だいたいよければそれでよしとしよう、こんな風にもとらえられる。競馬もこの様にとらえられたら面白い。ほんのちょっとのところで着順がちがっていても、そこまで来たのだから大筋ではよかったのだと。そのあと、きっといいことがあると。馬の方は、大筋で押えるとはその馬を信じて無理をさせず、その日のくる瞬間を待つということである。信ずるといっても闇雲に思うのではない。信ずるに足るものがきちんとなければならない。

 七夕賞を勝った6歳馬グランデッツァは、去年5月の京都の都大路S以来の勝利で、重賞は3歳のスプリングSから実に3年3ヶ月を超え、全くの久しぶりだった。つまり、クラシック戦線に名のりを上げ皐月賞で一番人気になったのだから、その時点で信ずるに足るものがあったのだった。ダービーも戦って秋に備えたものの、競走馬の職業病とも言える屈腱炎を左前脚に発症して1年8ヶ月も休養、その後も、3ヶ月、3ヶ月、4ヶ月半とこの2年間だけでも合計10ヶ月にも及ぶ放牧などをくり返えされてきた。平田調教師にしてみれば、このままでは終われないのであって、いくら敗北が続いても、いつか大きな仕事をする器、だから大筋さえ押えて辛棒していればいい位の気持であったのではないか。事実、京都芝1800mを1分43秒9のレコードで勝った都大路Sの実績があるし、去年のマイルCSでは1分31秒7で3着と、最近勝ちタイムの速い七夕賞でチャンスが訪れても不思議はなかった。

 距離もハンデも問題とせず、完全復活を印象づけたグランデッツァだが、今回は貫禄勝ちであって、大きな仕事はこの秋に成し遂げるというはっきりした目標が現実味をおびてきたというところだ。桜花賞馬マルセリーナの半弟で、馬名がイタリア語で偉大とか雄大という意味、「大筋を押えた」成果が見えている。

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長岡一也

ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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