悲喜こもごも〜抽選馬指名選択結果

2004年05月18日(火) 15:10

 このほど届いた「JBBA・NEWS」5月号に、去る4月26、27日の両日にわたって実施された今年度のJRA抽選馬指名選択結果の詳細が紹介されている。

 それによれば、今年度は東西合わせて153名の馬主から購買申し込みがあり、倍率は2.2倍。価格は一律692万円。売却頭数は東西ともに35頭。昨年の市場でJRAに購買されたのが全部で90頭なので、最終的に20頭が選から漏れたことになる。売却率(指名率)77.77%である。

 すでに一部の競馬専門誌などで指名馬一覧が紹介されているが、ここで簡単に指名上位馬について触れておこう。まず東組1位はビーマイファイアの02。ビーマイナカヤマの異父妹(父クロコルージュ)で浦河・永田克之さんの生産。2位はスタイリッシュランの02(父ダンスインザダーク、牡)。三石・パラダイスファーム生産。3位がナイスパリスの02(父グラスワンダー、牝)。4位フィールズオブゴールドの02(父グラスワンダー、牝)。新冠・須崎牧場生産。5位チェリークラッシュの02(父スターオブコジーン、牡)。門別・戸川牧場生産。

 続いて西組。1位はウィステリアコートの02(父グラスワンダー、牡)。静内・田原橋本牧場生産。2位がヘイアンリリーの02(父ロドリゴデトリアーノ、牡)。門別・佐々木牧場生産。3位がシャムロッククリークの02(父バブルガムフェロー、牡)。新冠・前川隆範牧場生産。4位にクレアコートの02(父ジェイドロバリー、牝)。鵡川・上水牧場生産。5位にエアバーニングの02(父タイキブリザード、牡)。千葉・出羽牧場生産。

 こうして見ると、東西を通じて上位指名馬10頭中、3頭がグラスワンダー産駒である。昨年購買された90頭中、グラスワンダー産駒は全部で4頭いたが、残る1頭も西組の21位で指名されているので“完売”ということになる。新種牡馬としての期待の大きさが窺える。

 一方の「指名漏れ」を種牡馬と性別のみ紹介する。東組は、ウェイオブライト牡、キンググローリアス牡、シャンハイ牡、マヤノトップガン牝、テンビー牝、リンドシェーバー牝、メジロマックイーン牝、ディアブロ牝、ドリームウェル牝、スキャン牝の10頭。

 西組はジェニュイン牡、スキャン牡、キングヘイロー牡、デヒア牡、オペラハウス牝、サクラローレル牝、クロコルージュ牡、ドリームウェル牡、ダンスインザダーク牝の9頭。

 これだけの結果から当世の種牡馬人気度を云々できるものではないし育成段階での成長度の個体差などもあって乱暴に結論を導き出せるものでもない。だが、一定の「傾向」は見て取れる気がする。今年に限ってはスキャンやドリームウェルなどが不人気だった、ということである。

 さて、同誌には昨年の指名上位馬の現在までの競走成績も紹介されている。それによれば、西組は1位から5位までのうち、上位4頭がいずれも勝ち上がり、一応の結果を残しているのに対し、東組は、上位5頭中、勝ち上がっているのがわずか1頭にとどまっている。しかも指名1位から4位までの4頭はいずれも(4月18日現在で)未勝利だ。

 競走成績における東西の格差が目立つようになって久しいが、全体でも、西組は32頭出走中13頭で16勝しているのに対し、東組は33頭出走で9頭が9勝と差が出た。

 これからもまだしばらく未勝利戦があるのでこの数字は変わって行くだろうと思われるが、抽選馬の世界でも東西の格差はある程度歴然としているようだ。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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