週刊サラブレッド・レーシング・ポスト

2004年05月18日(火) 17:55

 英国の競馬統括団体『ブリティッシュ・ホースレーシング・ボード(BHB)』から、今年度のサマー・トリプル・クラウンに関する概要が発表された。

 夏のメジャーなレースを盛り上げることを目的に、昨年スタートしたこのシリーズ。グランド・スラムやトリプル・クラウン達成馬は出現しなかったものの、最終的にはBHB年度代表馬となったファルブラヴが初代シリーズチャンピオンとなり、ファンや関係者の間における一定の支持をとりつける事が出来た新企画であった。

 2年目以降の実施は初年度の成果を充分見極めてから検討すると言われており、場合によっては1年限りで消滅との噂も飛んでいただけに、システムのマイナーチェンジと賞金のスケールダウンはあったものの、今季も再び開催されることが正式に決まったのはうれしいニュースである。

 シリーズのファーストレッグは昨年同様、3歳馬が6月4日のオークス(G1・エプソム・12f10y)と翌5日のダービー(G1・エプソム・12f10y)で、古馬が6月4日のコロネーションC(G1・エプソム・12f10y)と6月16日のプリンスオヴウェールズS(G1・ロイヤルアスコット・10f)のいずれかのレースを制した馬に、サマー・トリプル・クラウンの資格が与えられる。

 セカンド・レッグが7月3日のエクリプスS(G1・サンダウン・10f7y)、サード・レッグが7月24日のキングジョージ6世&クイーンエリザベスS(G1・アスコット・12f)で、ファイナル・レッグが8月17日のインターナショナルS(G1・ヨーク・10f88y)であることも、昨年同様だ。

 昨年と変わったのは、サマー・トリプル・クラウンの定義である。1stレッグから3rdレッグを完全制覇した馬をトリプル・クラウン、更に4thレッグをも制したらグランド・スラム達成というのが昨年のルールだったのだが、今年は、1stレッグを制した馬が、残る3レースのうち2レースを制したらサマー・トリプル・クラウン完成と認められる事になった。

 過去の例に照らし合わせると、ブリガディアジェラード、トロイ、エラマナムー、ムトト、ナシュワン、オペラハウスの6頭が“達成”しており、充分に実現可能な目標である。達成馬には100万ポンド、およそ2億円のボーナスが贈呈される点も、昨年と変わっていない。

 ただし、昨年は500万ポンド、およそ10億円のボーナスを懸けて設定されていた4関門完全制覇の「グランド・スラム」は、今年は設定されないことになった。シリーズ各レースにポイントシステム(1着10点、2着6点、3着4点、4着3点、5着2点、6着1点)を設け、シリーズを通じて最多ポイントを獲得した馬を「ミドル・ディスタンス・チャンピオン」と認定するのも、昨年同様である。ただしチャンピオンへの賞金は、昨年の25万ポンド(約5千万円)から、今年は10万ポンド(約2千万円)に減額となった。

 シリーズというのは、各レースを『点』で捉えるのではなく『線』で繋ぎ、興味を持続させて競馬を流れで楽しむことが出来る、素晴らしいシステムである。

 トリプル・クラウンに挑むような馬が出現し、願わくばここに日本馬が絡んでくるような展開を期待したい。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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