2015年09月09日(水) 12:00
アイリッシュ・チャンピオンズ・デイ初日の12日(土曜日)に、レパーズタウンで行われるのが、10FのG1アイリッシュチャンピオンSだ。
実はこのレース、「出否は天候次第」という有力馬が複数いて、確定メンバーは当日にならないとわからないのだが、現段階で出走の構えを見せている馬は全部出てくるという前提で展望していきたい。
出走すれば1番人気が予想されるのが、ゴールデンホーン(牡3、父ケイプクロス)だ。ご存知のごとく、デビューから無敗でG1英ダービー(芝12F10y)を制した馬である。古馬との初対決となったG1エクリプスS(芝10F7y)もザグレイギャツビー(牡4、父マスタークラフツマン)を筆頭とした古馬勢に3馬身半差の快勝を演じ、この段階でレイティング130を得てワールドランキングの首位に立つことになった。
ところが、出走予定だったG1キングジョージ6世&クイーンエリザベスS(芝12F)を馬場悪化を理由に取り消した後、8月19日にヨークで行われたG1インターナショナルS(芝10F88y)で、オッズ51倍の伏兵アラビアンクイーン(牝3、父ドゥバウィ)の後塵を浴びて連勝がストップ。敗戦という結果もさることながら、逃げ馬不在だったG1エクリプスSでやむを得ずハナを切った影響からか、序盤で折り合いを欠く場面があったことが、案じられる事態となっている。9月5日に、主戦のフランキー・デトーリを背にニューマーケットのロウリーマイルで追い切りを行い、出走態勢を整えているが、陣営は馬場が重よりも悪くなった場合は回避すると言明している。
更に、「出走は良馬場が条件」となっているのが、グレンイーグルス(牡3、父ガリレオ)だ。今季ここまで、G1英二千ギニー(芝8F)、G1愛二千ギニー(芝8F)、G1セントジェームスパレスS(芝8F)を3連勝している、3歳最強マイラーである。ところがその後、G1サセックスS(芝8F)、G1ジャックルマロワ賞(芝1600m)、G1インターナショナルS(芝10F88y)を、いずれも馬場悪化のため、回避もしくは出走を取り消しており、すでに3か月近く実戦から遠ざかるはめに陥っている。出走してくれば、10Fを走るのはここが初めてとなるが、陣営はシーズン最後の目標として北米のG1BCクラシック(d10F)を掲げており、距離延長には不安がないとしている。
3歳世代からは、8月1日にグッドウッドで行われたG1ナッソーS(芝9F192y)で、春の英千ギニー(芝8F)に続く2度目のG1制覇を果たしたレガーティッシモ(牝3、父デインヒルダンサー)、20日にヨークで行われたG1ヨークシャーオークス(芝12F)を制し、こちらも春のG1愛千ギニー(芝8F)に続く2度目のG1制覇を果たしたプレアスコック(牝3、父テオフィロ)の2頭も、ここでそれぞれ自身初となる牡馬への挑戦を企てている。
そして、古馬勢の代表格として出走を予定しているフリーイーグル(牡4、父ハイチャパラル)もまた、陣営が「出走は良馬場条件」と言っている1頭だ。今季初戦となった前走、ロイヤルアスコットのG1プリンスオヴウェールズS(芝10F)で、ザグレイギャツビーとの競り合いを制して待望のG1初制覇を果たした同馬。相変わらず使い込めない点は解消されていないようで、ここはそのプリンスオヴウェールズ以来の実戦となる。ただし、調教は入念に積まれており、鉄砲駆けのきくタイプでもあるだけに、出てくれば優勝争いに加わる1頭となろう。
一方で、道悪歓迎なのが、フランスから遠征予定の古豪シリュスデゼーグル(セン9、父イーヴントップ)だ。今季初戦のG1ガネイ賞(芝2100m)で自身7度目のG1制覇を果たし、健在ぶりを誇示した同馬。続くG1イスパーン賞(芝1850m)で4頭立ての4着に敗れた後、外傷のため戦列を離れている同馬だが、早くから復帰戦の目標をここに置き、仕上がりは万全と伝えられている。
馬場に関わらず出走予定なのが、昨年に続くこのレース連覇を狙うザグレイギャツビー(牡4、父マスタークラフツマン)だ。今季はここまで5戦して未勝利だが、一線級を相手に常に好戦しており、オーストラリアを破った昨年のパフォーマンスが再現できれば、当然のことながら争覇圏内に入る馬である。ここまで記した馬たちが全部出てくれば、近年でも稀な好メンバーとなるだけに、何とか良馬場になって欲しいものである。9月13日(日曜日)には、ロンシャンで本番と同コース・同距離のレースが3つ行われる。
ニエル賞の結果次第では、凱旋門賞における3歳世代の旗手となる可能性があるのがエルプト(牡3、父ドゥバウィ)だ。デビューが今年の4月23日で、春のクラシックには間に合わず、6月14日にシャンティーで行われたG3リス賞(芝2400m)で重賞初制覇。続いて駒を進めたG1パリ大賞(芝2400m)でも、一気の相手強化を物ともせずに快勝し、デビューから無敗の4連勝でG1初制覇を果たしている。
G1仏ダービー2着馬で、前走は北米に遠征してG1セクレタリアトS(芝10F)を制しているハイランドリール(牡3、ガリレオ)も、使って来れば侮れない存在だ。この後、豪州遠征を控えていると言われているが、同厩舎から昨年豪州に渡ったアデレイドも、セクレタリアトSを勝って帰国した後、豪州遠征の前にここを使われており、出走の可能性はおおいにありそうである。
このレースではもう1頭、アイルランドから登録しているファウンド(牝3、父ガリレオ)も目の離せない存在だ。2歳秋、ロンシャンのG1マルセルブーサック賞(芝1600m)を制し、今季の英国3歳牝馬クラシックの最有力候補と言われた同馬。ところが、今季の開幕直前に熱発を起こして調整が狂い、G1英千ギニーは回避。今季緒戦となったG3アサシS(芝7F)で2着に敗れると、続くG1愛千ギニー(芝8F)2着、ロイヤルアスコットのG1コロネーションS(芝8F)2着と、勝利の女神に見捨てられたようなシーズン前半を過ごした。だが、ひと息入れて立て直しを図り、戦線に復帰した8月23日のG3ロイヤルホイップS(芝10F)を、4馬身差で快勝。春先までの評価を考えれば、復調なったこの馬が、凱旋門賞へ向けた「台風の目」になっても、おかしくはなさそうである。ただし、同馬は前日のG1アイリッシュチャンピオンSにも登録があり、そちらに廻る可能性も示唆されている。
G1ヴェルメイユ賞には更に、G1インターナショナルSでゴールデンホーンを破るという大番狂わせを演じたアラビアンクイーン(牝3、父ドゥバウィ)も出走を予定している他、春のG1ドバイシーマクラシック(芝2410m)勝ち馬で、3着に敗れたG1サンクルー大賞以来戦列を離れているドルニヤ(牝4、アザムール)も出走の構えを見せている。
G1キングジョージ2着馬イーグルトップ(牡4、父ピヴォタル)の登録もあるが、この馬はここを回避し凱旋門賞に直行するものと見られている。
G2フォワ賞にはこの他、G2シャンティー大賞(芝2400m)勝ち馬で、G1サンクルー大賞(芝2400m)4着のマナティー(牡4、父モンスン)。6日のG1バーデン大賞(芝2400m)を軽い熱発で取り消したG1ベルリン大賞(芝2400m)2着馬イトゥ(牡4、父アーデルフルーク)らの登録もある。
なおグリーンチャンネルでは、9月13日にロンシャンで行われる凱旋門賞プレップ3競走を、現地ロンシャン競馬場と衛星回線を結んで生中継する予定だ。大一番を前にした有力馬の走りを、皆様もぜひご確認いただきたい。
合田直弘
1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。